講演情報
[12]電気自動車の電力で医療器材を洗浄から滅菌までおこなうことが可能か確かめる実証実験
彦坂 宗平1, 齊藤 岳児2, 吉野 篤人3 (1.浜松医科大学医学部附属病院 材料部, 2.浜松医科大学次世代創造医工情報教育センター, 3.浜松医科大学医学部地域医療学講座)
【はじめに】地震災害が生じた時,医療ニーズは増大する.洗浄・滅菌機能がない,あるいは停電や断水などでその機能が消失した施設では医療器材の再使用はできない.昨年電気自動車(EV)で滅菌装置を稼働させる実証実験をおこなった際には滅菌装置の稼働は可能であったが滅菌前の洗浄が課題として挙がった.そこで今回は,プールの水を医療用洗浄水精製装置で浄水後,超音波洗浄をおこない,乾燥させ,滅菌する工程をEVの電源ですべて賄うことで,洗浄から滅菌までのトータルの医療器材再生処理が可能か否か検証した.【目的】本研究ではEVと可搬型外部給電機を使用して浄水装置・超音波洗浄器・乾燥用ブロアー・滅菌装置をトラブルなく稼働させることが可能か明らかにする.【方法】EVから可搬型外部給電器を経由して,浄水装置・超音波洗浄器・乾燥用ブロアー・滅菌装置に給電し,疑似血液を付着させた医療器材を洗浄・滅菌した.水はプールの水を使用した.【結果】EVと可搬型外部給電器から電気が供給され,各装置の運転中のアラーム発生はなかった.超音波洗浄後の蛋白質抽出テストでは全て200μg以下であった.滅菌装置では化学的・生物学的インジケータともに良好な反応を示した.3回洗浄・滅菌を実施して74%のEVバッテリ残量は74%から71%となった.【考察】EVと可搬型外部給電器により各装置はトラブルなく稼働可能であった.洗浄評価では全て基準以下の数値であった.66kWhバッテリ搭載車のNISSANアリアで最大66回の洗浄・滅菌が可能であることが分かった.浄水装置はリアカー搭載サイズで,卓上超音波洗浄器,過酸化水素ガスプラズマ滅菌装置とともに中型トラック搭載可能サイズであり,あらゆる場所に移動して洗浄・滅菌できる可能性が示唆された.洗浄後の汚水の処理対応が課題として残った.