講演情報

[137]人工知能技術を用いたバスキュラーアクセス機能推定の現状と課題

城屋敷 健志1, 和田 親宗2 (1.東海大学文理融合学部人間情報工学科, 2.九州工業大学大学院生命体工学研究科)
我々は以前の研究において,生体内音を高感度に検出可能な生体音響センサを用い,検出したシャント音スペクトログラム画像に人工知能技術を適応して,シャント音からバスキュラーアクセス機能の指標となる血管抵抗指数(RI)と上腕動脈血流量(FV)を高い精度で推定できるようになった.今回は現状までの成果について解説し,今後の開発の問題点について考察した.過去の結果より,高感度の生体音響センサから得られたシャント音スペクトログラム画像を,畳み込みニューラルネットワークを用いて超音波診断装置で得られたシャント機能を推定した所,RIが0.7以上の閾値において97.9%,FVが350ml/min以下の閾値において94.1%の正解率で異常を検出できることが分かっている.一方で実用化に向けた課題として,計測の手間がかかってしまい,計測装置単体では利点が少ない等が考えられる.近年は超音波診断装置の小型化によってタブレットタイプでも血流量測定等の機能診断が可能な機種も販売されているため,本方法を用いた開発を進めるのであれば,小型化・ウェアラブル化,計測時間の短縮,あるいは常時計測が可能といった機能が必要であると考えられる.現状の計測方法は最もシャント音が強く検出できる吻合部からの聴音であったため,部位の選択をしなければならず,測定部位を限定しない方法の開発をしなければならない.さらに計測装置の校正も問題点としてあり,生体軟組織上における生体音響センサの校正装置と標準的評価方法の開発が必要となってくる.また人工知能については学習量や方法についても課題があり,実際の使用を想定した場合,学習できる教師データ量が少ない,校正を手動でしなければならない等の問題が考えられる.これらの実用的な条件における計測方法,校正方法,人工知能の使用方法等の問題に関して解決をおこない,開発していく必要がある.