講演情報
[138]人工心肺の貯血レベル自動安定化制御に向けた新たな気泡除去装置の検証
百瀬 直樹1, 安田 徹1, 松田 孝平1, 小久保 領1, 草浦 理恵1, 中山 勝成2 (1.自治医科大学さいたま医療センター 臨床工学部, 2.泉工医科工業㈱)
【背景・目的】我々は貯血槽を体外循環回路から分離した閉鎖回路によって貯血槽の貯血量(貯血レベル)を自動安定化させるシステム(CLC)を開発し,臨床使用してきた.しかし脱血から流入する気泡を除去するため,施設にて気泡除去装置を製作せざるを得なかった.今回,泉工医科工業社製人工心肺システム(HASIII)にてCLCを実現するため一部設計変更をして気泡除去機能を持たせ,これを検証したので報告する.【方法】HASIIIの気泡検出器と電動オクルーダを連動させ,気泡検出によりオクルーダが開く設定もできるよう設計変更した.CLC回路の送血ポンプと人工肺を結ぶ回路に気泡検出器を設置した.そして人工肺の一次側にエアトラップがある泉工医科工業社製HPO-21FHP人工肺を使用し,人工肺と貯血槽を結ぶエアベントラインにオクルーダを取り付けた.動作を検証するため,ソフトバックで作った患者モデルによって体外循環操作を模擬した操作をおこなった.また空気を脱血回路に50mlを10秒間連続と瞬時に流入させ,気泡が除去されるかを確認した.【結果】送血流量を変化させても貯血レベルは安定したままで,レベルセンサの上下でレベルの調整が可能であった.空気の流入では,瞬時・連続ともに気泡検出と同時にオクルーダが開いて空気は貯血槽へと排気され,送血側では気泡が検出されなかった.【考察・結論】一般的な開放回路では,貯血レベルの調整は体外循環を担当する技士の集中力と職人的技術を必要としてきた.CLCではレベルセンサ位置に貯血レベルが自動安定し,人工心肺の開始や離脱操作も送血ポンプのつまみひとつでおこなえ,体外循環の操作性と安定性が高まる.しかし閉鎖回路は気泡除去が課題であった.メーカによって製品化されている気泡検出器やオクルーダは信頼性も高く,気泡除去装置としても有効に機能した.本法の気泡除去システムの確立により,閉鎖回路の課題が解決できHASIIIによるCLCが実現できる.