講演情報

[139]人工心肺用高精度制御可能なオクルーダーのピストン圧閉度に対する脱血流量の関係調査

深山 天空, 森下 武志 (桐蔭横浜大学大学院工学研究科医用工学専攻)
【はじめに】人工心肺の脱血回路における流量調整は操作者にとって重要な要素技術の一つである.その操作は脱血回路の途中に鉗子やオクルーダー装置を用いて,専門的な知識や経験をもとに定性的な知見によっておこなわれている.一方,脱血回路の圧閉度と脱血流量の定量的な関係を示す研究はあまり見受けられず,専門書や教科書等においても定量的な解説には至っていない.そこで我々は,高精度制御可能な圧閉ピストン(以下ピストン)を備えるオクルーダー装置を独自に開発し,高精細なピストン制御によりその圧閉度に対する脱血流量の定量調査に取り組んでいる.本稿では,脱血回路中の脱血チューブ圧閉に対するピストン変位と脱血流量の関係の調査を試みた.【方法】実験セットアップは,模擬人体と脱血・送血回路に限定した最小限の体外循環回路に水を用いてプライミングした.脱血流量調整には本装置を用い,脱血チューブを圧閉することで流量調整をおこなう構成とした.脱血方法は落差脱血法であり,計測は回路中のリザーバーをメスシリンダーに替え,任意に設定した水位に至るまでの時間を測定した.ピストン変位のキャリブレーションは流量が止まった位置を変位0mmとし,脱血チューブの完全閉塞ポイントとした.実験は0mmから圧閉度を変化させることでチューブ内径を開いた.本稿では0mmから11mmの範囲で1mm間隔,特に閉塞直前は0.1mm間隔とし,段階的な圧閉度で流量を計測した.【結果および結論】変位11mmから0.3mm (約97%閉塞) までは貯水時間の顕著な変化は示さなかったが,それ以降の狭い範囲で貯水時間の変化が見られた.この結果は,完全閉塞直前のわずか3%程度の範囲から,実質的な脱血流量調整ができることを示している.加えて機械的な制御によって流量調整をおこなう場合,脱血流量調整はチューブ完全閉塞直前のわずかな範囲において,精密なピストン制御可能な装置が求められていることを示唆している.