講演情報
[14]ポジトロン断層法に似た画像を得られる新規磁性トレーサー医療画像法
Tay Zhi Wei1, Conolly Steven2 (1.産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 医療機器研究グループ, 2.カリフォルニア大学バークレー校生物工学部・電子工学部)
【目的】ポジトロン断層法Positron Emission Tomography(PET)は,ヒト体内深部でもトレーサーを高感度で鮮明に可視化(Tracer imaging)できるため,医用画像診断において生体分子ターゲットの正確な追跡が可能となる.しかし,使用されるトレーサーは放射性同位体であり,放射性崩壊により時間とともに急速に輝度減衰するため,イメージングウィンドウや放射被ばく量の難点がある.一方,優れた生体適合性の酸化鉄磁性ナノ粒子MNP はMRI 造影剤contrast として既に臨床使用される.本研究は,酸化鉄を画像contrast ではなく,トレーサーのように可視化する新規磁気画像法MagneticParticle Imaging(MPI)を開発した.【方法】生体組織に完全透過する低周波(1-25kHz)励起磁場を印加し, 酸化鉄の超常磁性(Superparamagnetism)磁化を測定する.生体組織には自然な超常磁性信号源がないため,PET と同様入れたトレーサーから鮮明・定量な画像が得られる(Contrast と異なり組織バックグラウンドから影響ゼロ).同時に照射したField-free-line の高速走査に基づく2D 画像化する(投影式トモグラフィーで3D 画像も可能).【成績】Derenzo ファントムを用いた空間分解能は2mm,330 pM [MNP] の感度を達成した.酸化鉄粒子の生体内分布を定量・鮮明に可視化した.粒子が標識として幹細胞に付き,動物モデルに幹細胞の長期間生体内トラッキングに成功した.【結論】現在の開発段階ではMPI 技術の感度がPET画像法に劣るが,装置と粒子技術の発展による改善が期待される.放射性崩壊がない「磁気版」Tracer imaging 画像法として臨床研究へと進めたいと考えている.