講演情報

[16]小児が安全に使用できる排便障害に対するスマートリハビリ機器の開発

荒 桃子1,2, 渡邊 祐介2, 石田 稔2, 武田 芳明2, 渡邊 雄大2, 高橋 遼1, 河北 一誠1, 河原 仁守1, 本多 昌平1, 武冨 紹信1 (1.北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室I, 2.北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構)
【はじめに】鎖肛やHirschsprung病などの小児肛門・下部消化管疾患では,便失禁や下着汚染といった術後排便機能障害を有する患児が一定数存在する.肛門機能訓練として,筋電位を視認しながら肛門括約筋および骨盤底筋を訓練するバイオフィードバック(BF)療法の有効性が報告されている.しかし,小児用筋電センサがなく,保険診療として実施できないことから普及に至っておらず,術後患児に対し十分な治療がおこなえていない.そこで,ゲーミフィケーションを取り入れ,患児が楽しく継続できるBF療法用機器の開発を目指している.今回,小児用筋電センサを開発し,その安全性および肛門内圧や排便機能スコアとの関連性について検討をおこなった.【方法】鎖肛術後患児を対象に,小児用筋電センサを用いた筋電検査,肛門内圧検査を実施し,排便機能スコアを収集した.検査値は中央値(IQR:interquartile range, range)で表記し,スピアマンの順位相関係数を算出した.【結果】患児10名に小児用筋電センサを使用したが,疼痛や有害事象を認めなかった.9例の患児で筋電計測が可能であり,随意収縮筋電中央値は630μV(IQR 405-1520,range 40-2440),随意収縮圧中央値は95mmHg(IQR 65-138,range31-346)であった.随意収縮圧値と随意収縮筋電値に有意な相関(ρ=0.74,p<0.001)を認めた.筋電値および肛門内圧と排便機能スコアとの相関は認めなかった.【結後】小児患者に適した筋電センサを開発し,その安全性と筋電値の測定能を確認した.BF療法におけるモニタ機器として筋電計は内圧計の代替となり得ると考えられる.今後は,患者報告アウトカムとして排便日誌による機能評価の有用性を検討しつつ,ゲーム機能と排便日誌を有する訓練支援アプリケーションの開発をおこなう.