講演情報

[17]民間病院におけるものづくり企業・支援機関との協働によるユーザ評価

篠原 智誉1, 橋詰 薫2, 鹿野 麻里2 (1.三菱京都病院 診療技術部臨床工学科, 2.公益財団法人京都産業21)
【はじめに】医療現場のニーズを的確に捉え,より良い医療機器を開発するためには現場の意見を直接聞くことが重要である.そこで今回,ものづくり企業が開発中の医療機器を対象として院内スタッフによるユーザ評価を実施したので報告する.【目的】ものづくり企業が開発中の医療機器,改良検討製品に対し現場目線での改善要望や問題点の指摘,スタッフへのヒアリングによる潜在ニーズや製品取り扱いの実情把握,市場調査としてのターゲティングやコンセプト検証などを目的とした.【取り組み内容】当院講堂にて内覧会形式の展示会を実施した.支援機関である(公財)京都産業21の協力のもと展示企業を公募した.院内スタッフはコメディカル,各診療科医師のほか,事務職員や社会福祉士など広く参加を呼びかけた.スタッフ,企業双方に事後アンケートをおこなった.【結果】のべ約100名の常勤スタッフが参加した.参加者からは医療機器の使いやすさ,安全性,デザインなど様々な視点からの意見が寄せられ,企業側からは現場の生の声を聞けたことや他の企業との交流ができた一方,期待していたターゲット層からの意見聴取が不十分であった点や,初の試みのため社内の稟議申請が煩雑であったことが指摘された.【考察】ものづくり企業が開発中の自社製品を臨床スタッフが直接評価することは,開発の手戻り回避や新たな市場開拓につながりうる.民間病院は病院特性が多様で,時代に合わせた医療サービスを展開しやすいことから,ユーザ評価を通じて様々なターゲット層とマッチングでき,ニーズ確度に見合った医療機器開発の促進が期待される.【結語】院内内覧会によるユーザ評価は,医療機器開発における新たな可能性が示唆された.今後も医療現場と企業が協力し,患者にとってより良い医療を提供できるよう取り組んでいきたい.