講演情報
[18]医療機器分野の特許出願状況から見た主要国における医療機器市場の分析に関する研究
浅岡 延好, 久芳 明 (一般社団法人日本医療機器産業連合会 医療機器政策調査研究所)
【目的】「医機連産業ビジョン-いつでもどこでも安心して受けられる医療と健康への貢献-」に掲げられた「医療機器・技術のグローバル化を通じた医療機器産業の発展」を検討するため,主要市場における医療機器の特許出願件数と医療機器市場規模の間に正の相関を持つという仮説を検証し,当該市場の特徴を分析する.なお調査対象とした日米欧中韓の合計は世界の特許出願の8割以上の出願先であり1),医療機器市場規模では世界の86%を占めている2).【結論】調査対象の内,日米欧韓では医療機器の国別売上高と医療機器の国別特許出願件数の間に強い正の相関が認められた.これは市場規模が大きく成長も期待できる医療機器市場に対して積極的に医療機器の特許が出願されることを示すものと考える.一方,中国については例外的な特徴が認められた.中国への外国籍による外国出願件数は最も多い欧州よりも僅か1.8%少ない2番目であった.一方中国への中国籍による国内出願の件数は5か国中最多で,2番目の米国の約2倍であった.そして中国への全出願件数は2番目の米国の約1.7倍であり,また中国の国内出願の割合は95%と際立って高かった3).【考察】強い正の相関がある医療機器の市場規模と医療機器の特許出願件数の状況から,現時点で例外的な特徴を示す中国についても,今後の市場規模拡大を示唆した結果であるとも考えられた.すなわち,当該出願件数は当該市場規模の先行指標とみなせるのではないかとの仮説が考えられる.一方では,中国籍の自国偏重とも言える出願状況もあり,今回の調査だけでは断定できず,さらなる調査が必要である.文献1) 特許庁:https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/ip5/index.html(2025.1.9時点).2) F i t c h S o l u t i o n s G r o u p L i m i t e d :Worldwide Medical Devices MarketForecasts. March 2024, 28-9, 2024.3) 特許庁:令和5年度 特許出願動向調査-マクロ調査-報告書II. 72-86, 2024.