講演情報

[22]軟性内視鏡の洗浄性評価に用いる蛋白質抽出液の検討

馬場 重好1,2, 三軒 隼人2, 藤田 敏2, 高階 雅紀1,3 (1.日本医療機器学会滅菌技士認定委員会, 2.クリーンケミカル㈱, 3.大阪大学医学部附属病院 手術部・材料部)
【背景】医療現場における滅菌保証のガイドライン2021では,洗浄後の軟性内視鏡の残留蛋白質の抽出は,一般的なRMDと異なり蒸留水が用いられている.蒸留水は,RMD材質との適合性が高い反面,蛋白質を抽出する効果は低い.さらに,残留血液中で形成されるフィブリンは,洗浄が難しい難水溶性物質である.そのため,蒸留水での抽出は,効果的な方法ではないと推測される.【目的】内視鏡の鉗子チャンネルを模したテフロン製チューブにて,蛋白質の抽出に用いる抽出液の組成と抽出・定量方法を検討したので報告する.【方法】テフロン製チューブ内部にフィブリンの疑似汚染物を作製した.疑似汚染物を3種の抽出液[蒸留水,1% SDS(pH 11±0.5),1 %SDS+0.2 N NaOH]に60分浸漬し,抽出液自体の蛋白質可溶化効果を確認した.また,ガイドラインに準じ,疑似汚染物を3種の抽出液で抽出した.得られた抽出液はアルカリを添加した.抽出後のチューブとブラシは,1% SDS+0.2 N NaOHで難水溶性物質であるフィブリンなどを可溶化し,蛋白質定量により抽出効率を算出した.【結果】3種の抽出液のうち1% SDS+0.2 N NaOHで,80%以上の可溶化効果が認められた.回収率は蒸留水が72%,1% SDSが84%であり,1% SDS+0.2 N NaOHでは90%を上回る抽出効果が認められた.【考察】難水溶性蛋白を含む抽出液の定量をおこなうには,高いアルカリ性の溶液を用いることが望ましい.蒸留水や1% SDSで抽出を使用すると,抽出後の溶液をアルカリ化させ,難水溶性蛋白質を可溶化しなければ,正しく定量できない.また,抽出液の内視鏡等への影響の確認が必要である.【結論】1% SDS,1% SDS+0.2 N NaOHは現法以上に効果的な抽出が可能である.高いアルカリ性の抽出液は,蛋白質の抽出効果に優れる.※ 本研究は,日本医療機器学会 滅菌技士認定委員会,日本消化器内視鏡技師会およびオリンパスメディカルシステムズの共同研究である.