講演情報

[23]蛋白質抽出液が軟性内視鏡からの蛋白質の抽出・定量操作に与える影響の調査

馬場 重好1,2, 三軒 隼人2, 藤田 敏2, 高階 雅紀1,3 (1.日本医療機器学会滅菌技士認定委員会, 2.クリーンケミカル㈱, 3.大阪大学医学部附属病院 手術部・材料部)
【背景】医療現場における滅菌保証のガイドライン2021では,洗浄後の軟性内視鏡の残留蛋白質の抽出は,一般的なRMDと異なり蒸留水である.しかし,先行研究より蒸留水は,1% SDS(pH11±0.5)や1% SDS+0.2 N NaOHと比較して蛋白質の抽出効果が低いことが確認された.より正しい洗浄評価をおこなうために,少しでも効果の高い抽出液の使用が望まれるが,内視鏡等への影響や抽出・定量操作への適合性確認が必要である.【目的】内視鏡の洗浄評価に用いる抽出液と,抽出に使うブラシや内視鏡本体との適合性を検討する.【方法】ブラシを抽出液(1% SDS,1% SDS+0.2N NaOH)にそれぞれ30℃,7日間浸け,定量操作への影響を確認した.1% SDSに浸けたブラシは,さらに残留蛋白質の抽出のため90分間1% SDS+0.2N NaOHに浸けた.また,オリンパス社および富士フイルム社製の大腸鏡・十二指腸鏡を,1% SDSで20回抽出操作をおこない,外表面と鉗子台動作の異常の有無を確認した.【結果】1% SDSに浸けたブラシは,OPA変法に対する測定阻害効果はなかった.一方,1%SDS+0.2N NaOHに浸けたブラシでは,一部のブラシから測定阻害効果が確認された.1%SDSを使用し,20回蛋白質抽出操作を実施した軟性内視鏡では,外表面および鉗子台動作に対する異常は確認できなかった.【考察】1% SDS+0.2 N NaOHは,洗浄ブラシとの適合性に問題が確認され,抽出液として使用できないと考えた.また,1% SDSを用いた蛋白質抽出操作は,内視鏡材質に与える影響性が低いと推測された.【結論】1% SDSを用いた蛋白質抽出は,内視鏡への影響性が低いことに加え,抽出・定量操作への適合性が高い.ただし,抽出後の溶液をアルカリ化させ,難水溶性蛋白質を可溶化したうえ,蛋白質定量をおこなう必要がある.※ 本研究は,日本医療機器学会 滅菌技士認定員会,日本消化器内視鏡技師会およびオリンパスメディカルシステムズとの共同研究である.