講演情報

[29]温度による羊血液粘度変化から蛋白質の熱変性温度を考察する

藤田 敏 (クリーンケミカル㈱技術開発部)
【背景】医療現場における滅菌保証のガイドライン2021第8章洗浄評価には,器材に残留している蛋白質が熱変性することにより抽出が困難となることから,洗浄評価の際におこなう洗浄プロセスは60℃未満を要求している.しかし,先行研究により予備洗浄温度を50℃に設定した場合,洗浄抵抗性が高くなることが明らかになり,60℃未満でも蛋白質が変性していることが示唆された.【目的】血液の温度を変化させて粘度を測定し,粘度の変化から熱変性温度を考察することができるか検討したので報告する.【方法】ヘパリン添加羊血液の全血液に加えて,全血液の遠心分離により得た血漿,血球を加えた3種を準備し,B型粘度計(Brookfield社製DV2T)にて温度を20℃から段階的に上げながら粘度を測定した.【結果】全血液の粘度は58℃まで低下するが60℃で上昇し始め67℃で急激に上昇した.血漿の粘度は62℃まで低下するが66℃で上昇し始め68℃で急激に上昇した.血球の粘度は52℃まで低下するが54℃から上昇し始め66℃で急激に上昇した.血液の成分により粘度が変化する若干温度が異なっていた.【考察】一般的に溶液の粘度は温度と反比例する.しかし羊血液はある温度を境に粘度が上昇することから,その温度において血液成分に何らかの変化が起こっていると思われる.熱によって変化していることから,蛋白質の熱変性が関連していると推測される.粘度が変化する温度は血液成分により異なるが,54℃付近から変化が始まり,66℃付近で終わると考えられる.【結論】血液の温度変化による粘度変化から,羊血液蛋白質の熱変性は60℃よりも前から始まっていることが示唆された.