講演情報

[3]高気圧酸素治療時に生じる耳痛軽減を目的としたデバイスの開発

青木 拓未1, 中島 章夫1, 鈴木 哲治2 (1.杏林大学保健学研究科臨床工学分野, 2.杏林大学保健学部臨床工学科)
【背景】高気圧酸素治療時,耳抜きがうまくできない患者では,外耳道と中耳腔の気圧差による耳痛の発生が高確率で起こる.治療中に耳痛が発生すると治療継続が困難になるだけではなく,患者が高気圧酸素治療に対する恐怖心を抱くきっかけにもなる.また,現在この耳痛発生を抑制するためのデバイスは開発されておらず,耳抜きを補助するための「オトヴェント」のみ臨床で用いられているのが現状である.そこで,治療中の圧変化による鼓膜の急激な歪みを抑えることにより耳痛の発生軽減が期待できる,非侵襲的な耳栓型のデバイスを作成し,その性能を評価することを目的とした.【方法】デバイスは,DKSH MESジャパン㈱により,航空機搭乗中の気圧変化による耳痛を軽減することを目的として開発されたSILENCIAフライト・エアーシリーズを改良し,同社と共同で高気圧環境下でも適切な減圧性能を発揮する耳栓を開発した.また,この開発した耳栓型デバイスを用いることで,高気圧酸素治療中に鼓膜にかかる圧力変化について,模擬鼓膜を用いて実測検証した.【結果】開発したデバイスを用いることで,高気圧酸素治療中に鼓膜にかかる急激な圧力変化を緩やかにすることができた.また,測定を通して,高気圧環境下でも安定して減圧性能を保持していることが確認された.【考察】高気圧酸素治療では,治療中に耳痛が高頻度で発生することが課題としてあげられる.しかし,今回開発したデバイスを用いて治療に臨むことで,従来よりも鼓膜にかかる急激な気圧変化が抑えられ,鼓膜に生じる圧変位を緩やかにすることができるため,耳痛の発生を軽減させることが可能となると考える.