講演情報
[30]口腔外科用ハンドピースの洗浄効果 取扱説明書遵守の必要性について
柏井 伸子1,2, 川口 順也3, 佐藤 沙織3, 庄司 卓也3, 樋掛 明洋3 (1.グローバル医科歯科感染管理研究会, 2.㈲ハグクリエイション, 3.㈱モレーンコーポレーション)
【目的】歯科・口腔外科領域で使用される医療機器の中で,再生処理が難しいものにハンドピースがあるが,その内部構造には製品ごとに多くの特徴がある.取扱説明書には独自の方法が記載されている場合もあり,2種類の洗浄方法による残留蛋白質抽出をおこない評価した.【材料および方法】㈱ナカニシ製口腔外科用コントラアングルTi-Max X-SG20Lに羊血100μLを塗布し,30分間室温乾燥させ試験対象物とした.洗浄は㈱モレーンコーポレーションのウォッシャーディスインフェクターアルノ(以下WD)を使用し,熱水消毒と乾燥工程は経ず,予備洗浄,中性酵素系洗浄剤での45℃ 10分間の洗浄,すすぎで終了とした.対象物を2群に分け,A群は取扱説明書に記載されている予備洗浄として,ビーカー内にヘッド部を入れ,毎分2,000回転のスピードで15秒間正逆回転をおこなってから,B群はその予備洗浄をせずWDでそれぞれ処理した.その後クリーンケミカル㈱製PQCLEANING TEST KITを用いて残留蛋白質を抽出し,同社にてOPA法で定量し評価した.【結果】両群の残留蛋白質μgは,A群では最大値47.9,最小値17.7,中央値33.6,標準偏差9.3,B群では最大値2783.2,最小値904.6,中央値1560.8,標準偏差717.6となり,両群間でのt検定の結果,有意差が確認された.【考察】医療現場における滅菌保証のガイドラインでは,残留蛋白質量を200μg以下と勧告しており,ドイツでは直接的にハンドピースに該当するRMD(reusable medical device)は不明ながら,内径4mmまでの内腔を有するRMDに関しては≦75μgとしている.以上からB群の方法では大きく許容範囲を逸脱しており,再使用時の完全性は確保されていない.【結語】同じ使用目的の製品でも,製造者ごとに内部構造に大きな違いがあるため,再生処理にあたっては取扱説明書記載内容を遵守することの必要性を確認した.