講演情報
[4]IEC 60601-1-8 新/旧規格の医療機器警報の音響特性に関する一検討
石田 開1, 藤井 清孝2 (1.湘南工科大学工学部人間環境学科, 2.北里大学医療衛生学部医療工学科)
【目的】医療機器には,患者の病態の急変や機器の動作上の不具合などを知らせるため,IEC 60601-1-8が規定する警報音が搭載されている.同規格が定める警報音は,これまでのメロディベースのビープ音から,人間工学を基にした認識性の高い音色に変更された.しかし,各種の環境音に晒され,劣化した際の警報音の特性に関するベンチマークはおこなわれていない.本研究では,IEC 60601-1-8が規定する,新/旧規格の警報音を対象に,信号処理を用いて,劣化警報音の特性を評価することを目的とした.【方法】本研究では,旧規格で規定する警報音8種および新規格の7種を対象とした.最初に合計15種類のサンプル音源に対し,高速フーリエ変換を施し,メルスペクトログラムを求めた.メルスペクトログラムとは,スペクトログラムの縦軸を人間が理解し易いメル尺度に変換したものである.次に,メルスペクトログラムの2次元の座標空間のデータを,1次元データに変換し,各警報音間のコサイン類似度を求めた.次に,劣化音源に対する評価として,各警報音の音量を0.1 ~2dBまで0.1dB毎に変動させるとともに,環境音(航空機のエンジン音や話し声など,10種を使用)と重畳させた.その後,信号処理により,クロマグラム,ゼロ交差率,スペクトル重心,スペクトルの帯域幅,スペクトルのロールオフ頻度および1~ 20までのメル周波数ケプストラム係数を求め,これらを基に,コサイン類度を計算した.【結果とまとめ】サンプル音源のコサイン類似度は,旧規格同士はすべて0.99を超え,新規格同士では0.886~ 0.985となった.一方,劣化音源では旧規格同士はすべて1.00となった.しかし,新規格同士では一つを除き,0.996 ~ 0.999の値を取った.新規格音源は,雑音が重畳し劣化しても,複数の特徴量を基にすることで,僅かな音響的な違いがあり,識別の優位性が示された.