講演情報
[41]医師のタスクシフトのための外科手術支援ロボットの導入を経験して
奥村 友瑛, 佐々木 拓海, 幸村 美奈, 川井 璃磨, 真柄 悠大, 田島 志緒里 (名古屋市立大学病院 診療技術部 臨床工学技術科)
腹腔鏡下手術は執刀医だけでなく助手・スコピストのチーム連携でおこなわれる.腹腔鏡下手術において,助手が適切に臓器をけん引し,スコピストが適切な術野を保持することは安全な手術をおこなう上で必須である.2024年4月より,医師の働き方改革の法改正がおこなわれ,タスクシフトとして臨床工学技士も告示研修を経た後に業務の拡大が始まっている.当院では,臨床工学技士は内視鏡支援業務をおこなっておらず,助手・スコピストを医師が担っている.現在,手術支援ロボットとしてda VinciやHinotoriが稼働しているが,これらはあくまで執刀医の役割を担っている.助手の役割に特化したロボットは,人員的問題等に対応できる可能性がある.当院は,2024年に執刀医が助手の鉗子・内視鏡カメラの両方を操作できる新しいコンセプトの外科手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」の導入を経験したので報告する.当時,ANSURは全国で2施設目,東海地方では初の導入であった.当院では,臨床工学技士が,da VinciやHinotori同様に支援業務をおこなうこととなった.1症例目は腹腔鏡下胆嚢摘出術をおこなった.内視鏡デバイスの選択や手術室の配置,術前のシミュレーションなど医師や看護師と連携し,手術当日は,臨床工学技士がANSURの術前準備,ロールイン,ロールアウトまで担当し,問題なく終了した.当院のように臨床工学技士がda VinciやHinotoriの支援業務をおこなっている施設では,比較的スムーズにANSURが導入できると考える.今後,様々な症例や疾患でのANSUR使用が予測されるため,シミュレーションの実施やマニュアルの整備が今後の課題である.