講演情報
[5]機械学習による医療機器警報音の識別に関する一検討
石田 開1, 藤井 清孝2 (1.湘南工科大学工学部人間環境学科, 2.北里大学医療衛生学部医療工学科)
【目的】医療機器には,病態の急変や機器の動作上の不具合を知らせるため,各種の警報音が搭載されている.しかし,環境音に晒されかつ同時発報する警報音を,適切に識別することは極めて困難である.本研究では,IEC 60601-1-8が規定する,新/旧規格の医療機器警報音を対象に,機械学習による識別精度を検討することを目的とした.【方法】1種類の警報音を推定するモデルと,2つの警報音を両方推定するモデルを検討した.本研究では,旧規格で規定する警報音8種,新規格では7種を対象とした.各警報音は音量を変動させ,環境音(航空機のエンジン音や話し声など,10種を使用)と重畳させた.各警報音は信号処理により,31の特徴量を抽出し,学習用データとした.データは訓練:検証=9:1に分割し,K=5の層化K-分割交差検証で評価した.分類器にはサポートベクタマシン(SVM)とランダムフォレスト(RF)を用いた.【結果】1種類の警報音を推定するモデルでは,SVMによる精度は71.9%となった.しかし,誤りが多かったのは旧規格に集中しており,新規格のみでの精度は87.5%,旧規格のみでは47.5%だった.2種類の警報音を推定するモデルでは,旧規格に対してはSVMで18.6%だった.また新規格に対しては,RFで51.2%となった.但し,少なくとも片方を正しく検出できた場合には,新規格の精度は94.4%となった.【考察】新規格の推定精度が旧規格よりも高かったのは,新規格の各警報音は人間工学を基に,音色が大きく異なっていることで,抽出された特徴量が異なったためと考えられる.また,1種の音源を推定するのは比較的容易であったが,複数の音源が同時に鳴った場合,すべて正しく判別することは難しかった.但し,今回構築したモデルでは,新規格では少なくともどちらか1つは正しく認識できる精度は高かったため,今後はモデルの改良をおこない,更なる精度向上を目指す.