講演情報
[55]早産児の喘鳴(Stridor)とCPAP 腹症候群の発生メカニズムの解明
細井 健司1, 清水 正樹1, 網塚 貴介2 (1.埼玉県立小児医療センター 新生児科, 2.青森県立中央病院)
【目的】早産児の呼吸は,安定した呼吸と2種類の努力呼吸(軽度と重症度が高い場合)があるとされている.それらの呼吸には,重症度の高い努力呼吸で単音性連続音の吸気性喘鳴と,人工呼吸器の抜管後にNCPAP療法またはHFNC療法を用いることで発症するとされるCPAP腹症候群の2つの課題がある.それらの機序は,未だに解明されていない.本研究の目的は,狭窄下流の振動の調査し,その振動とそれらの課題との関係性を明らかにすることである.【方法】新生児用自発呼吸シミュレータの3種類の自発呼吸モード(健康な肺:Exモード,気道抵抗の増した肺:HSモード,低コンプライアンス肺:Triモード)を用いて,腹部膨満を発生しないHNCPAPで狭窄モデル(差圧流量計)下流の振動の調査をおこなう.次に腹部膨満が発生するNDPAPで同様の調査をおこなう.【結果】HNCPAPのExモードの変動CPAP圧は,自然呼吸の生理的呼吸波形であった.そのため3種類の呼吸モードは,Exモードが安定した呼吸,HSモードとTriモードがそれぞれ軽度と重症度が高い努力呼吸であった.NDPAPの変動CPAP圧は,呼吸モードによらずほぼ一定であった.ところが両デバイスの狭窄下流では,呼吸モードよらず周期的な圧力変動と周期的なフロー変動が同時に発生していた.それらの変動は,1/4モードの定在波状態でケルビンヘルムホルツの不安定により渦列が発生していたことで生じていた.【結論】それらの周波数は,喉頭蓋下流で発生していたStridorの周波数と一致した.従って重症度が高い努力呼吸の場合は,周期的フロー変動が吸気フローと一緒に気管へ流入して声帯を振動させ,気道で共鳴してStridorを発症させていた.NDPAPの場合,吸気で呼吸モードによらず大きかった周期的圧力変動が気道壁を振動させ,振動の度にフロー変動を食道へ追いやっていたことで腹部膨満が発症していた.以上の結論から,StridorとCPAP腹症候群のそれぞれの機序が明らかになった.