講演情報

[56]顔モデルを用いたNPPV におけるマスクの装着力と装着位置の検証

鈴木 哲治1,2, 中島 章夫1 (1.杏林大学保健学部臨床工学科, 2.東京都市大学総合理工学研究科電気・化学専攻医用工学領域)
【目的】NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)は,挿管を必要とせず専用のマスク(以下マスク)を用いて換気を補助する.しかしNPPVではリーク量を減少するための,マスク装着のきつさや位置調整時の装着の繰返しにより,患者の受入が困難となる.その要因の一つとして,マスクを装着する力(装着力)と装着位置に基準がない点が挙げられる.そこで本研究では,マスク装着での指標となる装着力と装着位置について検討した.【方法】これまでの研究で,顔モデルを用いてマスク装着力を一定の割合で変化させ,マスクの装着位置を下顎部3箇所(上縁・中心・下縁),口角左右断端の計5箇所でリーク量とマスク内圧の計測をおこなった.本研究では,これまでに計測したリーク量とマスク内圧の値から,リーク量が基準値を下回り,設定した陽圧が加わる装着力と装着位置について統計解析をおこなった.リーク量333mL(リーク量20L/minより算出),マスク内圧15cmH2O(呼吸器設定値)を基準とし,下顎部3箇所の装着位置で装着力ごとのリーク量とマスク内圧,それぞれで1群t検定(P<0.05)をおこなった.1群t検定の結果から,前述のマスク内圧およびリーク量の条件を満たす最小の装着力を求めた.求めた装着力での下顎部3箇所におけるリーク量でKruskal-Wallis検定(P<0.05)と多重比較(Bonferroni)(P<0.05)により,リーク量が少ない装着位置を検証した.【結果・考察】下顎部3箇所で1群t検定から求めた装着力は,上縁0.4N,中心0.6N,下縁0.4Nとなった.これらの3群でのリーク量を用いたKruskal-Wallis検定はP<0.05となり,多重比較(Bonferroni)でもすべての群間でP<0.05となった.以上のことから下顎部下縁0.4Nがマスク内圧およびリーク量の条件を満たす装着位置と装着力となった.マスクの装着位置は下顎部下縁にすることで,リークが生じやすい鼻背から鼻根でマスクのフィッテングが向上しリーク量が最小に抑えられたと考えられる.