講演情報
[58]物体検出AI を活用した人工呼吸器関連インシデント推論モデルの臨床評価と課題
芝田 正道1, 片岡 伶1, 高野 太輔1, 井手 健太郎2, 糟谷 周吾3, 小野 博4 (1.国立研究開発法人国立成育医療研究センター 手術・集中治療部医療工学室, 2.国立研究開発法人国立成育医療研究センター 集中治療科, 3.国立研究開発法人国立成育医療研究センター 手術・集中治療部, 4.国立研究開発法人国立成育医療研究センター 医療安全管理部)
【目的】当院の2023年度人工呼吸器関連インシデントは85件で主な内訳は「呼吸器回路組立て間違い」17件(吸気・呼気逆接続4件),「呼吸器設定間違い」16件,「加温加湿器・注射用蒸留水空」13件,「呼吸器の加温器電源入れ忘れ」1件であった.今回,吸気・呼気回路逆接続,注射用蒸留水空,呼吸器の加温加湿器電源入れ忘れについて物体検出AIを用いたインシデント推論モデルを作成し臨床中の人工呼吸器へ応用したので報告する.【方法】人工呼吸器はServo-air(フクダ電子)呼吸器回路はRT206(Fisher & Paykel社)加温加湿器はMR850(Fisher & Paykel社)注射用蒸留水は1,000mL(扶桑薬品)とした.プログラミングはPython3.11,物体検出AI:YOLOv11n( Ultralytics社 ),アノテーション: labelImg(Ver1.8.1)を使用.学習モデルは正常・異常の画像をtraining用2,087枚,validation用558枚,test用300枚,モデルの評価は正解率,再現率,適応率,F1値とし臨床中の人工呼吸器は8台で推論した.【結果】学習モデルによるtestは吸気・呼気回路逆接続,加温加湿器の電源入れ忘れは全て正解で各指標は1.0,注射用蒸留水空は正解率0.96,再現率0.88,適応率1.0,F1値0.94であった.臨床中の推論は吸気・呼気回路逆接続は各指標1.0,加温加湿器の電源入れ忘れは正解率・再現率0.75,適応率1.0,F1値0.86,注射用蒸留水空は正解率・再現率0.88,適応率1.0,F1値0.93であった.【考察】人工呼吸器関連インシデントは日本医療機能評価機構から注意喚起がなされ対策が求められる.物体検出AIを用いた人工呼吸器関連のインシデント判別を目的とした学習モデルは高い精度が得られ,使用環境の違いによる精度の課題はあるが臨床中においても応用可能であることが示唆された.今後は他分野への応用含め検討を進めていきたい.【結論】物体検出AIを用いた人工呼吸器関連インシデント推論モデルは臨床中においても有用であった.