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[59]透析治療中のシャント肢および非シャント肢末梢循環動態の評価:rSO2・SpO2・PI の解析

和田 結佳1, 川畑 駿太郎1, 中井 浩司2, 平松 武幸2, 小嶋 和恵2, 平手 裕市2, 檜垣 登志江3, 土井 厚3, 中嶋 貴4 (1.中部大学大学院生命健康科学研究科生命医科学専攻, 2.中部大学生命健康科学部臨床工学科, 3.名古屋掖済会病院 臨床工学部, 4.名古屋掖済会病院 腎臓内科)
【背景】透析治療におけるシャント肢の末梢循環動態の変化は,シャント狭窄やスチール症候群といった合併症に関連し,その評価は重要である.近年,末梢動脈疾患の血流評価では,近赤外分光法を用いた局所組織酸素飽和度(rSO2),指尖容積脈波,パルスオキシメータによる脈波振幅比率(PI)の有用性が報告されている.しかし,透析中にこれらを組み合わせて両上肢の末梢循環を評価した研究は少ない.本研究では,シャント肢と非シャント肢のrSO2,SpO2,PIを比較・定量評価し,シャント機能不全の早期発見に役立つ基礎データの収集を目的とした.【方法】2023年の1ヶ月間,外来透析を受けたシャント合併症がなく,血行動態が安定したAVF患者16名を対象に,単施設前向き観察研究を実施した.両側の示指と手背にパルスオキシメータ(TL-201T)およびINVOS SPSモジュールを装着し,透析開始前,開始後1時間ごと,返血前,透析終了後にrSO2(%),SpO2(%),PI(%)を測定した.相関回帰分析と2群間の差の検定をおこない,有意水準をp<0.05とした.【結果】シャント肢と非シャント肢のrSO2,SpO2,PI の相関回帰分析では,それぞれy = 0.67x + 11.9(r = 0.80,p < 0.05),y = 0.77x + 22.8(r = 0.82,p < 0.05),y = 0.55x + 1.15(r = 0.71,p <0.05)と有意な相関を認めた.また,透析前後の比較では,シャント肢でrSO2 35.9 ± 13.2vs. 36.3 ± 8.6,SpO2 97.5 ± 1.7 vs. 97.8 ± 1.3,PI 3.0 ± 1.8 vs. 2.6 ± 1.3 であり,また非シャント肢では,rSO2 39.4 ± 13.5 vs. 34.5 ± 10.6,SpO2 96.9 ± 2.0 vs. 96.9 ± 1.5,PI 3.3 ± 1.7 vs.3.0 ± 1.9 であり,いずれも有意差はなかった(p> 0.05).【結語】シャント合併症のない透析患者では,シャント肢および非シャント肢rSO2,SpO2,PIに両側間や透析前後に有意差はなかった.今後,症例を増やし,シャント機能不全患者との比較を通じて,非侵襲的モニタリングがシャント合併症の早期発見に有用かを検証する必要がある.