講演情報
[6]AVF 血流音解析を用いた血圧推定システムの開発
中島 章夫, 相原 大輝, 鈴木 哲治 (杏林大学保健学部臨床工学科)
【はじめに】我が国の透析患者は,平均年齢69.9歳と高齢化しており,透析時の血圧低下による合併症は約20 ~ 30%と危険性が大きい.一方透析中の血圧測定間隔は通常30分前後で実施するため,血圧低下の早期感知システムは必要不可欠とされている.先行研究では,脱血側回路に装着した心音図センサで,動静脈瘻(AVF)血流音から血圧を推定したが,本研究では,AVF血流音測定時の雑音混入・除去性能持つ血圧推定システムの開発を目的とした.【方法】吉祥寺あさひ病院の維持透析患者20名を研究対象とし,脱血側透析回路の先端から3cmの部分に心音マイクロホンを装着,透析開始から終了までのAVF血流音を市販ボイスレコーダで録音した.血圧は,透析監視装置付帯の血圧計で透析開始より30分間隔で収縮期血圧(SBP)を測定した.AVF血流音データから音響解析ソフトで750Hz以下の音データを抽出し,実効値演算,統計トレンド演習,移動平均した波形より最大値(Sp値)を求め,SBPと対応したSp値より推定血圧(e-SBP)を算出した.【 結果・考察】本システムより,SBPとe-SBP間にはr=0.9011と正の相関が確認された一方,誤差14mmHgとなる測定事例があった.これは,e-SBP算出に用いている基準血圧測定時(HD開始後30分)の体位(座位,または仰臥位)が,透析中の血圧測定時(60分以降)の体位(仰臥位)と異なっていることが原因と考えた.【 終わりに】今後の課題として,e-SBP算出までにかかる時間を短縮するため,AD変換機能を持つ高性能小型マイクロホンをシステムに組込むことで,AVF血流音のPC取込みと解析を同時におこない,リアルタイムでの血圧推定方法を検討する.