講演情報
[60]超音波エコーとAI を活用した鍼治療教育の新たな提案
宮本 成生1, 石田 伸二郎2, 種市 敢太3 (1.仙台赤門短期大学鍼灸手技療法学科, 2.TCC Media Lab ㈱, 3.BODYREMAKER 鍼灸院)
【背景】従来の鍼治療の教育では,シリコン素材を用いた刺鍼練習が主流であり,実際の人体組織に対する客観的なフィードバックを得ることが困難であった.そこで本研究では,超音波エコー画像を活用し,刺鍼技術の可視化と客観的評価を可能にする教育システムの構築を試みた.本研究の目的は,超音波エコー画像をAIで解析するシステムを用いることで,再現性の高い鍼治療を実現し,教育への応用を検討することである.【方法】本システムでは,持ち運び可能な超音波エコー装置を使用して皮下を撮像し,その画像をTCC Media Labが開発したAI解析ソフトを組み合わせることで,超音波エコー画像をリアルタイムに解析する.このAIは筋肉の自動識別機能を備え,さらに画像から鍼を検出可能である.教育実践として,鍼治療で最も多く見られる症例である「腰痛」を主題とし,腰背部への安全な手技習得を指導した.【結果と考察】腰背部には皮下数センチに腎臓などの重要な臓器が存在しており,誤った刺鍼による医療事故のリスクがある.本システムを用いることで,学生はリアルタイムで超音波エコー画像を確認しながら刺鍼練習をおこなうことが可能となった.また,本システムにより,刺鍼部位と深度を可視化することで,従来の練習法と比較して安全かつ効果的な学習が可能となることが示唆された.今後,より多くの臨床データを収集し,教育効果の定量的評価をおこなう予定である.【結論】超音波エコー画像解析AIを活用した教育システムは,従来の主観的な練習方法に代わる新たなアプローチとして有望であり,安全性と再現性の向上が期待される.本研究の成果は,今後の鍼灸教育における標準的なトレーニングツールとしての発展が見込まれる.