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[63]静的応力解析を用いた冠動脈ステントのリンク部における力学特性

松本 萌夏, 山内 康司 (東洋大学大学院生命科学研究科生体医工学専)
【背景】冠動脈ステントは近年,薬剤溶出ステントにより留置してから約6ヶ月後におこなわれる検査では数%まで再狭窄率を下げることができた.しかし,右冠動脈が収縮期に105度,拡張期に125度となり,この20度の角度振幅の繰り返し負荷によって血管内で破壊する問題がある.繰り返し負荷による破壊は約7%で起こり,冠動脈ステントのセグメントをつなぐ部分であるリンクで破壊が起こるという加速耐久試験の報告がある.【目的】冠動脈ステントが105度と125度に湾曲した状態でのリンクにかかる力学特性を,静的応力解析を用いて明らかにする.それによって,リンクの構造の最適化に繋げる.【方法】まず,既存の冠動脈ステントのリンクの形状を調査したところ,主に直線型,S型,N型,U型,ランダム型の5種類が存在した.次に,これらの形状の冠動脈ステントを3D CAD,CAEソフトウェアであるFusion360を用いてモデリングをおこなった.計算の簡便化のため,本研究ではリンク2列分の長さでモデリングをおこなった.材料は冠動脈ステントの材料として主流であるSUS316Lを用いた.最後に,Fusion360のシミュレーション機能を用いて静的応力解析をおこなった.拘束方法は両端完全固定,105度のときの荷重が11N,125度のときの荷重が9N,メッシュ数が直線型:37765,S型:38884,N型:39914,U型:37711,ランダム型:37825であった.【結果および結論】解析の結果,リンクの結合部分に大きな応力がみられ,105度と125度の状態で応力の差があった.よって,リンクの結合部分で破壊が起こると考えられる.また,リンクの形状による応力の大きさの違いがみられたことから,リンクの形状と破壊のしやすさに関係がある.したがって,リンクの結合部分に焦点を当て,形状についてさらに追究すれば,より破壊されにくい冠動脈ステントの開発に繋がると考える.