講演情報

[70]医学教育用模擬除細動器の作製

堀 純也1,2, 片山 将太2, 鴨山 怜生2, 難波 知義2 (1.岡山理科大学工学部生命医療工学科, 2.岡山理科大学理学部応用物理学科臨床工学専攻)
医療従事者向けの二次救命講習会などにおいては除細動器を用いた心停止の対応スキルを学ぶ.講習会においては,慣れない受講者が除細動器を使用するため,本来は150Jにエネルギー設定する場面においても,安全性の観点から5J程度に設定して,「150Jに設定したことにする」といった方法で実施することもしばしば見受けられる.しかし,実際の場面を想定したシミュレーション教育においては,できる限り本来の使用方法に近い状態で除細動器の操作を学習することが望まれる.したがって,実際と同様の動作をし,かつ安全に使用体験できる教育用除細動器があれば有用と考える.これまでに,除細動器の動作を模擬した回路の例は報告されているが,これらの報告例では医療機器と同じ動作を電子回路で再現することを中心に着目しており,二次救命講習会などで操作体験のスキルを学ぶためには改良の余地があると考える.そこで,本研究では,出力エネルギーは抑えた上で実機と同様の操作体験ができる医学教育用模擬除細動器を作製した.作製した除細動器は,除細動器の動作原理の学習もできるように単相性および二相性の出力波形を切り替えられるものとした.単相性除細動器の回路部分はキャパシタとインダクタから構成した.また,二相性除細動器の回路部分はキャパシタからの放電をHブリッジ回路により切り替えて正負を反転させた切断指数波形となるようにした.筐体は3Dプリンタを用いて作製し,出力エネルギーは抑えつつも,それ以外の動作は実機と同様な体験ができるものとした.今回作製した模擬除細動器は数万円程度の材料費で作製できるため,高価な除細動器を複数用意することが困難な場合でも安価に台数の確保が可能である.また,回路の内部も確認できるため,二次救命講習会のみだけでなく,臨床工学技士などの養成教育にも活用できると考える.