講演情報
[71]AR グラスによる人工呼吸器のトラブルシューティング用コンテンツの作成と有用性の検討
佐藤 広隆1,2, 村井 燦1, 笠井 亮佑1, 加納 敬1, 内林 諒輔1, 田仲 浩平1 (1.東京工科大学医療保健学部臨床工学科, 2.東京都市大学理工学研究科電気化学専攻)
【背景・目的】日本医療機能評価機構の報告によると,2020~ 2024年に人工呼吸器関連の事故が1,540件発生している.その中には,アラーム発生時の対応ミスや遅れにより重篤な状態に至ったケースもあり,トラブル対応の知識や対策の不足が課題とされる.本研究では,ARスマートグラスを活用した人工呼吸器のトラブルシューティングマニュアル(ARマニュアル)を開発し,その有用性を検討した.【方法】音声認識アプリ「NEC現場作業ソリューション」を使用し,複数の文献を基にリーク発生時の人工呼吸器アラーム対応マニュアルを作成した.作成したマニュアルをスマートグラス「MOVIRIO BT-40S」に導入し,ARマニュアルとした.被験者(学生28名)を対象に,人工呼吸器の回路破損またはカフ圧低下のトラブル対応を実施させ,ARマニュアル(AR)と紙マニュアル(PM)の比較をおこなった.原因はブラインドの状態で実施し,解除時間,アンケート,チェックリストにより評価をおこなった.【結果】ARとPMの比較では,解除時間および手技の精度に有意差は認められなかった.一方,アンケートでは「アラーム対処がしやすかったか?」という質問に対し,「しやすい」と回答した割合はARが82%,PMがそれ以下であった.また,ARの方が使用しやすいと答えた被験者は61%であった.【考察】ARはPMと同等の対応能力を持つことが示唆された.また,アンケート結果から,多くの被験者がARの使用を好んでおり,有用性が高いと考えられる.ただし,デバイスに関する課題も指摘されており,さらなる改良が必要である.【結論】開発したARマニュアルは,デバイスの課題を解決すれば有用であることが示唆された.今後は対応範囲を拡大し,デバイスの改良を進めることで,さらなる実用性向上を目指す.