講演情報
[72]AR グラスによる看護技術教育ツールの開発と中期的効果の検証:無作為化比較試験
山本 育子1, 青木 明子1, 玉本 和紀1, 青木 郁子1, 高橋 初恵1, 山本 由美1, 西崎 祐史2, 野尻 宗子2, 代田 浩之2, 植松 卓也3, 佐藤 広隆4, 田仲 浩平4 (1.順天堂大学医学部附属順天堂医院, 2.順天堂大学, 3.順天堂大学医学部附属静岡病院, 4.東京工科大学)
【目的】看護技術教育の質を保証する新たな方策として,ARグラスを活用した教育システムが注目されている.本研究では,東京工科大学が考案した医療ARグラスシステムを用いた点滴作成の技術教育コンテンツを開発,新人看護師を対象にARグラスを用いた点滴作成研修が技術習得に及ぼす効果を検証することを目的とした.【方法】入職間もない新人看護師を対象に,介入群にはARグラスによる点滴作成研修,対照群には通常の技術チェックリストのみを用いた研修による無作為化比較試験を実施した.主要評価項目を点滴作成22手順とサブカテゴリ6項目で構成した技術得点による習熟度とし,研修直後,1ヶ月後,3ヶ月後の中期的な2群間比較をおこなった.また,介入群にはARグラスの使用感アンケートをおこない記述統計により評価した.【倫理的配慮】順天堂大学医学系研究等倫理委員会の承認を得て実施した.【結果】17名(介入群8名,対照群9名)が参加し演習を完遂した.習熟度は,研修直後で介入群平均15.6点,対照群14.9点(P=0.72),1ヶ月後で介入群17.5点,対照群12.5点(P=0.06),3ヶ月後で介入群18.8点,対照群18.2点(P=0.58)であり各時点の統計的有意差は得られなかったが,得点推移は1ヶ月後で介入群に比べ対照群に低下を認め,特に衛生的手洗い,清潔な環境整備,指示確認に該当する手順で介入群の習熟度が高かった.使用感評価ではシステム使用性および情報の質で評価が高い一方で,操作性の質では評価がやや低かった.【考察】ARグラスによる演習は通常の研修に比較し,中期的な技術習熟度で明らかな有意差を認めなかったが,短期かつ特定の手順の習熟度維持に有効な可能性がある.しかし,本研究ではサンプル数が少なく一般化はできない.一方,操作性に課題があるが使用感の評価は高かった.ARグラスは研修による単回使用よりも,看護師個々のペースで効率的かつ実践的な反復練習に活用できる可能性がある.