講演情報
[73]Virtual Reality が及ぼす心理的影響の検証
毛利 空広1, 平手 裕市1, 和田 結佳1, 平野 紗名1, 川畑 駿太郎1, 中井 浩司2, 菱田 佑樹2, 小嶋 和恵2, 松井 藤五郎2,3 (1.中部大学大学院生命健康科学研究科生命医科学専攻, 2.中部大学生命健康科学部臨床工学科, 3.中部大学工学部情報工学科)
【背景】Virtual Reality(VR)は,医療現場において遠隔治療や教育研修などに活用が進む一方,VR視聴に起因する不快感や心身の不調の発生が指摘されている.本研究では,VR視聴が心身へ及ぼす影響を,生理学的指標を用いて評価する.【方法】健常成人34名を対象に,心拍センサ,血圧計,経皮的酸素飽和度などの各種生体用センサ,ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で,安静座位状態を5分間維持した後,森林浴の疑似体験を可能とするrelax VR映像を5分間視聴,安静座位状態を5分間維持した後,ジェットコースターの疑似体験を可能とするstress VR映像を5分間視聴した.心拍変動データから周波数解析をおこない算出された,低周波成分のパワー値(LF power[msec2])を自律神経活動,高周波成分のパワー値(HFpower[msec2])を副交感神経活動,LF/HFを交感神経活動の指標とし,循環呼吸動態を反映する各種パラメータとともに観察し,4群間の比較分析をおこなった.【結果】Relax VRとStress VR視聴時のLF powerは,411(260-645) vs 1047(386-1257) となり,Stress VRで有意に上昇した(p=0.002).LF/HFは,1.31(0.76-1.95) vs 2.15(1.26-3.51)となり,Stress VRで有意に上昇した(p=0.036).HF powerは,369(167-710) vs 390(344-735)であり,有意な差を認めなかった.また,心拍数,血圧,心拍出量は,Relax VRに比べStress VRで有意に上昇した.脈動率(PI)は,RelaxVRとStress VRで,3.3(1.9-5.4) vs 1.8(1.1-2.3)となり,Stress VRにおいて,有意に低下した(p<0.001).また,PIは,安静時と中間安静で,3.1(1.9-5.4) vs 2.9(1.9-4.7)となり,中間安静において有意に低下した(p=0.029).【結論】Stress VR視聴時には心拍数,血圧,心拍出量,LF power,LF/HFが上昇し,Stress VR視聴によって,生体反応の誘発が記録された.一方,PIは中間安静時にも変動しており,次の負荷試験を想定した心理的影響の反映が示唆された.