講演情報
[74]プロジェクションマニュアルの協同学習の教育効果
伊藤 奈々1,2, 沖 雄二1, 武田 朴3, 田仲 浩平3, 日向 奈恵3, 横山 武志2 (1.帝京大学福岡医療技術学部, 2.九州大学大学院歯学研究院歯科麻酔分野, 3.東京工科大学)
医療従事者や医療系学生が血液回路の組み立て,手洗い,あるいは胸骨圧迫などの医療技術を修得する際,初めに原理や理論を学んだ後に実際に機器や材料を用いて実習をおこなう.実習では両手を使用するためハンズフリーで手順が確認可能なマニュアルが望ましい.そこで,われわれは,プロジェクションハンズフリーマニュアル(PM)を試作した.PMは複数人での同時参照が可能であり,情報共有が可能で共同学習し易いという特徴がある.医療技術習得におけるこの効果について評価した.PMは,我々が以前研究したスマートグラス(SG)応用のマニュアルと同様に画面を音声で自由に切り替え可能であり,音声ガイダンス機能もある.対象者は,帝京大学福岡医療技術学部の学生,生体機能代行装置学(血液浄化)の座学と実習を終了した学生66名から募集したボランティア18名とした.対象者を3人で共同学習をおこなう協同群(3組)と1人で個人学習(9名)をおこなう個人群にランダムに分けて,血液透析回路プライミングをそれぞれの群で実習した.実習には本人が必要と考える時間をかけさせた.実習直後と期間をおいてテストを実施した.評価は操作精度と所要時間,アンケートでおこなった.協同学習群が高精度を示し,アンケートでも「協同でおこなうため指摘し合いながらおこなえて良かった.」などの結果があった.グループで話し合いながら実習,それぞれの評価をおこなうため,記憶定着率が向上したと考えられる.SGはハンズフリーマニュアル用のディスプレイとして魅力を感じるが,現状では使い勝手とコストの高さでプロジェクターの方が実用的である.PMは,PCとプロジェクターがあれば使用可能であり,ほとんどの施設では導入コストがかからない,使用に伴う疲労が少ないなど,低コストで教育効果を向上させるのには最適なマニュアルであると考えられる.今後は,他の機器や手技などにも応用して教育効果の向上を図りたい