講演情報
[8]AR トリアージ訓練システムを活用したシミュレーショントレーニング
笠井 亮佑, 佐藤 広隆, 内林 諒輔, 島峰 徹也, 日向 奈惠, 田仲 浩平 (東京工科大学医療保健学部臨床工学科)
【背景・目的】大規模災害時は多くの傷病者が発生し,災害現場の地域全体や現場の医療の供給が著しく低下する.限られた医療資源で最大多数の傷病者に医療活動をおこなうために,トリアージで傷病者の治療優先度を的確に判断する必要がある.本研究ではAugmented Reality(AR)教材としてARトリアージ訓練システムの開発をおこない,多職種連携ハイブリッドシミュレータSCENARIO(京都科学㈱製)を用いたシミュレーショントレーニングによるAR教材と紙媒体教材での学習効果を比較することで,AR教材の有用性を検討することを目的とした.【方法】被験者は16名とし,AR教材を用いて訓練するAR群(8名),紙媒体教材を用いて訓練する紙群(8名)に群分けした.各群AR教材もしくは紙媒体教材を用いてSTART法によるトリアージ訓練を実施した.訓練は「赤(最優先治療群)」「黄(待機的治療群)」「緑(軽傷群)」「黒(死亡群)」の全てのシナリオを経験した.その後,各教材を用いずにテストを実施した.評価項目として,正答数と作業時間を測定し,比較検討した.【結果】AR群の正答数は,紙群と比較して高値を示した.AR群と紙群の全体平均作業時間に有意な差は認められなかった.一方で,負傷の有無の確認において,AR群の作業時間が有意に低値を示した.【考察】全体平均作業時間において有意差は認められなかったが,正答数においてAR教材によるトレーニングの有用性を認めた.AR教材では傷病者バイタルを見る視覚的情報に加え,音声による聴覚的ガイドがついており,より記憶の定着に繋がったと考えられる.【結語】紙媒体教材を使用した訓練と比較してAR教材を使用した訓練は,ほぼ同じ作業時間でより正確にトリアージをおこなうことができたため,効果的なシミュレーショントレーニングが実施できることが示唆された.