講演情報

[84]滅菌不良発生時のリコール対応訓練で得られた課題

佐藤 香理奈1, 佐藤 敦2, 大根田 守2 (1.地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立大塚病, 2.鴻池メディカル㈱)
【はじめに】本院は8年前に滅菌不良によるリコールを経験したが,職員の入れ替わりなどにより当時の状況を知っている者は少ない.滅菌不良は滅菌器の故障や人為的エラーより起こる可能性があることから,今回初めて滅菌不良発生時のリコール訓練をおこない,得られた課題について報告する.【目的】本院のリコール発生時のフローチャート(以下フローチャート)に準じて,報告と連絡およびリコール対象器材の回収をおこなうことができる.【方法】中央滅菌材料室職員4名,病院職員3名が参加し,平日日中に訓練をおこなった.BI陽性判定となった高圧蒸気滅菌器を事前に設定し,この滅菌器で滅菌し供給した器材をリコールの対象とした.訓練内容は,BI陽性判定の発見からリコール対象器材の回収までとした.訓練参加者に点検者が同行し,実際の動きを記録するとともに,所要時間を計測した.【結果】リコール対象となるロット番号と滅菌リストの照合は複数の職員でおこなった.滅菌物リストは数量のみで器材名が書かれていないものがあった.リコール対象器材は20品目66点であり,供給先は5か所であった.中央滅菌材料室職員3名が回収にあたり,回収に要した時間は42分間であった.回収できなかった器材は1点あり,訓練前日に患者へ使用されていた情報を病棟職員から聴取するまでに33分間を要した.回収担当者は施錠された病棟への入室と病棟内の器材が収納されている場所を探すのに難儀した.【考察】参加者はフローチャートに準じて行動し目的を達成することができた.滅菌物リストの様式と記載方法の改善が必要であった.迅速にリコール対象器材を回収するには,供給先の職員の協力が不可欠であることが分かった.【結論】リコール対応訓練により具体的な行動を体得することができ,課題が明確となった.今後も定期的に訓練をおこない有事に備えるとともに,BIの使用頻度を高めリコールの回避を検討したい.滅菌不良発生時のリコール対応訓練で得られた課題佐藤香理奈(地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立大塚病院)佐藤 敦,大根田 守(鴻池メディカル㈱)84( 84 ) 医機学 Vol.95,No.2(2025)―