講演情報

[88]滅菌業務従事者の腰痛の現状と対策の実態調査

石田 国夫, 吉池 憲治, 小野里 魁馬, 塩崎 拓弥, 新井 香穂, 森 信介, 安丸 千尋 (サクラヘルスケアサポート㈱)
滅菌供給業務従事者の中には腰痛を訴える従事者がおり,業務をおこなうことが困難になる場合がある.職員の健康と労働環境改善のため,現状と要因を明らかにし,対策を講じることは,業務の質を担保し,質の高い医療を支援するために不可欠と考えている.そこで,当社が業務を受託している27施設から同意を得られた182人に対し,社内コミュニケーションツール「つなぐ」を使用し,腰痛の有無,業務中の姿勢,作業台やシンクの高さが適切か,自己対策,施設設備対策を問う内容のアンケートをおこない,腰痛が発生または悪化した要因の検討をおこなった.対象者の中で業務関連腰痛ありと答えた人は64人(35%)だった.その内,経験年数10年以上が30人,1年以上3年未満が13人, 年代別では,50代23人,40代21人,30代9人,60代7人だった.業務関連腰痛ありの内,70%が作業台やシンクの高さが合わないと感じており,作業時の姿勢については95%が立位であり,立位の内,89%が「やや前かがみ」「強く前かがみ」であった.30分以上同一姿勢でおこなう業務のうち洗浄業務は34%,次いで組立業務が26%を占めており,作業台やシンクの高さが合わず長時間前かがみ姿勢をとっていることが要因であると考えられた.また,腰痛がある人の内,日常的に運動している人は38%で,自己対策として体操やストレッチ,湿布や服薬,コルセット着用などをおこなっていた.設備対策では体圧分散マットや椅子を設置していたが,腰痛改善にはつながっていなかった.以上のことから,腰痛発生・増強要因は,作業台などの高さに合わせて前かがみの立位姿勢で30分以上継続した業務をおこなっているためと考えられる.労働環境を整えるためには,高さ調整可能な作業台の検討など設備面の改善,長時間同様の姿勢を取らないなどの腰痛予防のためのセルフケア方法の教育が必要であることが示唆された.