講演情報
[9]電気事業法に基づく停電点検による医療機器安全の実践と展望
渡邊 雅俊1,2 (1.国家公務員共済組合連合会東海病院 臨床工学科, 2.名古屋市立大学大学院経済学研究科)
【背景】電気事業法に基づき,病院施設の電気設備の法定点検については,年に1回,停電により設備を停止状態にしておこなう点検(以下停電点検)の実施が定められている.本報告では,当施設における15年間の停電点検に伴う医療機器の安全管理体制を構築した事例をまとめ,医療機器安全管理責任者の観点から,適正な安全管理のあり方と今後の展望について考察する.【事例】当施設では,2010年から停電点検を実施し,停電時間(2時間30分)の間,自家発電機による電力供給をおこなっている.医療機器安全(医療ガスを含む)への取り組みは,年次ごとの現状分析により,安全性の確保を練り上げてきた.具体的な方法は,医療機器のスペック(電源方式,電圧確立時の機能),病院電気設備の安全基準(電源種別,停電から電源供給までの時間,自家発電機の備蓄燃料の確保)などの概要をまとめた停電対応マニュアルを作成し,業務の効率化・標準化を進めている.そのうえ,医療機器安全管理責任者と医療機器の利用者や電気設備の受託業者等との間で情報共有および連携により情報の確度を向上させ,患者安全を実践している.15年間で経験した医療機器に関する重大なインシデントはなく,電気設備の「自家発電機に切り換わらない」「復旧の目処が立たない」といった不測の事態には柔軟な対応をした.【考察】医療機器の安全管理の体制構築により,重大なインシデントを未然に防ぐことができたと考える.また,病院電気設備の安全確保に必要な基礎知識を得ることができ,災害対応のシミュレーションができたと考える.さらに今後,予期せぬ停電や計画停電においても医療を継続できるように,停電点検に合わせて災害対応訓練を実施することは,災害対応能力の向上を促すであろう.近年毎年のように起きている想定外,未曾有の災害にも病院機能を維持し,災害医療の一端を担えるよう,電力対策に取り組まなければならない.