講演情報

[92]鉗子選択行動に対するカラーマーカーの効果 第2報:異なる鉗子に付与した場合の検討

松本 綾奈1, 山内 康司1, 金井 しのぶ2 (1.東洋大学大学院生命科学研究科生体医工学専攻, 2.㈱マイステック)
【背景】器械台の上には見た目やサイズの類似した手術器具が多く,器械出し看護師が選択を迷ったり取り違える可能性もある.我々は異なる鏡視下手術用ディスポーザブル鉗子にカラーマーカーを付与することにより,鉗子選択時間を有意に短縮できることを明らかにし,前回大会で発表した.ただしこの研究で使用した鉗子は先端形状以外がほぼ同一であり,形状がやや異なる場合でもカラーマーカーが有効な選択手がかりとなるかは明らかではない.【目的】そこで我々は,形状がお互いにやや異なる鋼製小物にカラーマーカーを付与した際でも,鉗子を選択する行動に影響するのか,模擬的な実験により明らかにすることとした.【方法】被験者は非医療系の男女学生9名である.実験には鋼製小物3種類を用いた.カラーマーカーには,3色のカラーテープを用いた.机の上にドレープを置き,作業面の平均照度を1,000lx へと調整し,この上に3種類の鉗子を置いた.被験者にはあらかじめ鉗子の形状と番号の呼び方を暗記させた.実験条件は,「色あり鉗子を番号で指示」「色なし鉗子を番号で指示」「色あり鉗子を色で指示」の3条件とした.被験者に対して選択する鉗子の番号または色名を指示し,それを被験者が手に取って台の上に置くタスクを,1つの条件につき9回おこなった.実験風景は撮影をし,後ほどこの映像を確認して鉗子選択時間(手に取ってもらう鉗子の指示の言い終わりから,指定された鉗子を手に取るまでの時間)を計測した.【結果および結論】「色あり鉗子を番号で指示」,「色あり鉗子を色で指示」 条件間で鉗子選択時間の中央値には有意な差が見られ (p<0.05),「色あり鉗子を色で指示」すると,鉗子選択時間が短かった.このことから,鉗子の形状が異なる場合でも,鉗子に色(カラーマーカー)があることが,器械出し看護師が素早く鉗子を手渡す助けになると考えられる.