講演情報
[教育講演5]医療現場より、歯科器材製造開発企業に対する要望
足立 沢実 (東京科学大学病院 材料部)
【はじめに】歯科診療を提供している医療施設は歯科診療所が大多数であり,大学病院のように規模が大きい施設は少ない.医療施設の規模や方針により,器材のリプロセス(再生処理)に必要な洗浄器,滅菌器など保有機器,洗浄や滅菌方法にも差がある.【大規模病院での課題】歯系診療部門の1日来院患者数1,600名の当院は,歯科治療ユニット(以下歯科ユニット)330台を有し,1日に使用する歯科用ハンドピースは1,900本にのぼる.エアタービンや超音波スケーラーなどは,歯科ユニットのメーカや機種によって接続口が異なるため,汎用性が低く,歯科ユニット更新に伴い使用不可となるものもあり有効活用が困難な状況である.歯科器材の管理では,2019年より二次元シンボルの刻印による個体識別管理を導入し,手術器材や高額な器材を優先し管理を進めているが,器材のグリップ感を向上させるため滑り止めやシリコン加工がされている器材も多く,院内での刻印が困難なものも多い.リプロセスでは,添付文書に洗浄や滅菌の具体的な方法の記載がなく,取扱説明書を確認するよう誘導してあるが具体的な記載がないためメーカへ問い合わせる必要があるものもある.歯科材料では,滅菌品の販売がないため,歯科医師より院内滅菌を依頼される場合があるが,その多くは滅菌非対応と添付文書に記載されており,対応に苦慮することも多い.【開発企業への要望】歯科用ハンドピースの汎用性は大学病院ならではの問題かもしれないが,機種変更しても共通に使用できる接続口の開発など企業間で検討していただきたい.添付文書の記載内容が施設規模や保有機器に対応した実践可能な具体的方法であることや,器材の個体識別管理が施設規模によらず簡便におこなえるように二次元シンボルが表示された器材の販売,歯科手術に使用する材料やインプラント材料は,滅菌品もしくは滅菌可能なものの販売を検討していただきたい.