講演情報
[シンポジウム12]災害時の物流:病院SPDのあり方とBCPの視点
鶴来 隆一 (冨木医療器㈱メディカルソリューション事業部)
災害時における物流,SPD導入,その価値と重要性令和6年能登半島地震では,道路や上下水道の寸断といったインフラの断絶が医療現場に深刻な影響を及ぼした.物資自体は十分に確保されていたものの,物流網の混乱により必要な物資が適時に届かない事態が発生した.この状況下で,病院におけるSPD(Supply, Processing, andDistribution)システムの有効性が改めて問われた.SPDは平時における物資管理の効率化だけでなく,災害時には迅速な供給を可能にする仕組みであるが,導入しているだけでは不十分な点も明らかとなった.特に,インフラ断絶時でも継続供給を可能にするための訓練や,通信手段が制限された中での情報共有プロセスのシミュレーションが重要である.本地震では,最大震度7を記録した地域の病院で手術室の天井崩落や医療配管の断絶が発生し,吸引器などの医療機器の緊急搬送が必要となった.物流網の混乱により,搬送では安全を最優先に対応しつつも,必要物資の供給に遅れが生じた事例もあった.一方このような状況下でも,SPD導入施設では院内在庫を迅速に現場で使用することが可能であった.また,災害時における物流の混乱を最小限に抑えるためには,平時からの地域間連携や代替ルートの確保,さらには医療機関間での物資共有体制の構築が求められる.これらを教訓として今後何が必要か など今回の地震を教訓に,病院ごとの特性に応じたBCP(事業継続計画)の策定または見直しと定期的な訓練の必要性を強く感じた.BCPは災害時に命を守る行動指針であり,医療現場のレジリエンスを高める鍵である.特に,SPDをBCPに組み込むことで,物資供給の効率化と安定化を図ることが可能となる.また,災害時におけるインフラの多重化や,物流業者との連携強化も重要な課題である.災害時の物流とSPDの役割を再評価し,BCPの視点から医療現場のレジリエンス向上に向けた具体的施策が必要である.今後は,平時からの備えを強化し,災害時に迅速かつ的確な対応が可能な体制を構築することが求められる.これにより,医療機関が災害時にも安定した医療提供を継続できる基盤を確立することを目指す.