講演情報
[シンポジウム2]精密で安全な顎顔面口腔領域の手術を可能にする医療機器マーカーの開発
丸岡 豊 (国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター 歯科・口腔外科)
正確な手術をおこなうためには術野のマーキングは必須であり,わが国でもメチルロザニリン塩化物(別名:クリスタルバイオレット等)を用いた様々な名称のデバイスが用いられてきた.しかし,2019 年にカナダ保健省は本成分の発がんリスクを認定し,同国内での使用中止と廃棄を進めた.わが国でも2021年12月に厚生労働省医薬安全対策課から通知が出されたが,代替品となる「医療用マーカー」の多くは成分不明の雑品であり,患者への説明や同意を得ることなく認証医療機器のごとく使用されており,安全性への懸念がある.そこで我々は経済産業省サポイン事業の支援のもと,ニーズ探索から開始し,その安全性,筆記性,γ線滅菌耐性,長期保存安定性,動物実験等の多くの実証実験の結果を経て医療機器認証を取得した手術用マーカーを開発・上市した.その開発過程や上市後に得られた知見について紹介し,本開発がより安全な手術環境の実現に寄与することを期待する.