講演情報

[T66]セラミックヒーターを用いた新型焼灼器に関する研究開発

森田 裕也, 森下 瑛文, 岩上 直樹, 毛利 和磨, 羽賀 冬樹 (日本ガイシ㈱)
【目的】外科手術では,筋肉や結合組織を切断し,血管を焼灼して止血し,腫瘍を摘出するために電気メスや超音波破砕器が使われる.焼灼器の中でも電気メスは容易に焼灼・止血・切断をおこなうことができるが,局所電流の及ぶ範囲の調整が極めて難しい.つまり,微小操作で処置したい組織のみを焼灼・止血・切断することが困難であり,重要な血管や神経付近での使用が制限される.そこで,重要な血管や神経付近において,微細なコントロールが可能な新たな焼灼器を開発する.【方法】局所,急速加熱かつ形状自由度のあるセラミックヒーターを用い,温度と時間を制御することで止血および凝固を可能とするデバイスを開発した.生体組織を炭化させずに凝固させるには100 ~ 180℃に温度をコントロールする必要がある.本デバイスは,ヒーター温度を設定し,接触部位のみを焼灼するので,処置範囲の予測がつきやすく精密な処置が可能である.このデバイスの有用性を検証するため,動物試験にて焼灼速度や熱伝達範囲の評価をおこなった.【結果】豚を用いた動物実験により,ヒーター温度150 ~ 200℃で止血速度が2秒以内,熱伝達範囲が1mm以内であることを確認した.脳表面,骨内血管,硬膜血管など複数部位で同様の性能を確認した.また,電気メスと異なり,本デバイスでは過度な熱が加わらないため,組織収縮がないことやサージカルスモークが発生しないことも確認できた.【結論】本研究で開発した新型焼灼器は,重要な血管や神経付近において,微細なコントロールが可能なため,より高度な外科手術に極めて有用である.今後,定量的なデータのさらなる取得および形状の精緻化を進めることで,臨床で使用可能な性能を確保したプロトタイプの完成を目指す.