講演情報

[T96]乾燥促進効果を付与した潤滑防錆剤の検証

小守 啓友, 謝花 喜史, 米田 友則, 川向 恵美子, 平田 善彦 (サラヤ㈱サラヤ総合研究所)
【はじめに】近年,医療器材の構造の複雑化や医療の高度化が急速に進む中で,器材を長く適切に活用するには日常のメンテナンスが重要である.医療器材の最終すすぎ時に添加される潤滑防錆剤は,器材に潤滑効果と防錆性を付与することで,機能性向上および器材耐用年数の延長が期待される.従来,潤滑効果を目的に流動パラフィンを主とする潤滑防錆剤が使用されているが,その乾燥促進については限定的な効果に留まる.多岐に渡る作業を効率化するために乾燥促進効果は重要であり,そのため,現在は界面活性剤を主とした潤滑防錆剤も使用されている.この潤滑防錆剤は,水の表面張力を低下させるため,濡れ性を向上させ,乾燥時間を大幅に短縮させる効果を有する.この乾燥促進効果は,作業効率の向上と滅菌工程への確実性を求める上では重要であると考えられる.しかし,医療現場における滅菌保証のガイドラインに記載されている通り,潤滑性に関しては限定的な効果に留まるという課題がある.【評価方法および結果】本研究では,界面活性剤を主とする潤滑防錆剤を開発し,これと流動パラフィンを主とする製剤を比較し,乾燥促進効果と潤滑性を評価した.乾燥促進効果は潤滑防錆処理した止血鉗子を90℃で乾燥させ,残存している水分量を計量した.潤滑性評価は,指の触感による官能評価に加え,摩擦測定機による数値化を実施した.その結果,構成成分の適切な選定により,界面活性剤を主とする潤滑防錆剤は乾燥促進効果に優れ,かつ流動パラフィンを主とするものと同等の潤滑効果を医療器材に付与できることが明らかとなった.【まとめ】以上の結果から,防錆性に加えて,潤滑効果と優れた乾燥促進効果を両立した新規の潤滑防錆剤は,医療器材の乾燥時間を短縮し,良好な状態を維持することが可能であると考えられる.これらのことにより,作業効率の向上と医療器材の保存性向上に貢献できると考える.