講演情報

[109]手術用鋼製金物における職人仕上げと大量生産の現状分析

中西 穂高1, 戸田 裕子1 (1.帝京大学, 2.㈱マイステック)
本稿は,手術用鋼製金物を「職人仕上げ(A層)」「ハイブリッド(B 層)」「大量生産(C 層)」の三層構造として整理し,それぞれの役割と課題,今後の方向性を分析している.A 層は脳外科や眼科など高精度が要求される器具を対象とし,職人の感覚に依存した手仕上げによって高い信頼性とブランド価値を形成する.一方で,熟練工の高齢化や技能継承の属人化が課題であり,技能のデジタル化・形式知化が求められる.
B 層は自動加工と職人仕上げを組み合わせ,精度とコストの両立を実現する市場の中心領域である.日本やドイツが品質面で優位に立ち,地域クラスターやAI 検査導入による再現性向上が進んでいる.C 層は標準化された器具を大量生産し,低価格で世界市場の供給基盤を担うが,品質ばらつきや環境負荷が課題である.三層は競合ではなく相互補完関係にあり,A 層が技術的上限を示し,B 層が実用的最適解を提供し,C 層が量的安定供給を支える.今後は各層の強みを活かしつつ,技能継承,デジタル技術,環境配慮を統合した持続的発展が重要と結論づけている.