講演情報

[111]センサ内蔵型鉗子デバイスの多目的最適化設計:術中組織計測における計測精度と操作性の両立

山川 祥紀1, 本田 江美1, 森 武彦1, 上田 淳2 (1.㈱ニチオン 手術器械事業部, 2.ジョージア工科大学機械工学部)
低侵襲手術(MIS)において,リアルタイムな組織性状評価は迅速かつ正確な術中診断に不可欠である.しかし,画像診断センサを手術器械へ統合する際、センサの計測精度(アライメント)と外科医が求める操作性(開口角やストローク)は互いに相反する制約条件となる.本研究では,多目的最適化アルゴリズムを用いた体系的な設計フレームワークを構築し,センサ内蔵型鉗子の設計妥当性を検証した.
単一可動顎構造を有するセンサ一体型鉗子を対象とし,上顎長・下顎長・ピン間距離・ピンオフセット距離の4つを主要な設計変数に設定した.評価指標として,操作性の感度を左右するストローク長の最大化と,計測精度に直結するセンサ位置偏差の最小化を設定し,非優劣ソート遺伝的アルゴリズム(NSGA-II)を用いてパレートフロントを近似した.さらに,ハイパーボリューム指標を用いて解集合を定量評価し,器具径やセンサ動作範囲などの物理的・幾何学的制約が設計自由度に与える影響を分析した.最適化の結果,顎長については比較的広い設計自由度が存在する一方,ピン間距離およびピンオフセット距離については,器具径の制約により極めて狭い範囲でしか最適解が存在しないことが明らかとなった.また,センサの許容動作範囲が狭まるほど最適解の探索が困難となり,特定のパラメータが設計の境界条件を規定していることが示された.
本研究により,センサ内蔵手術器械の開発において,まずセンサ仕様と器具径を確定させた後に顎幾何学パラメータを微調整するという,データ駆動型の段階的設計方針の有効性が示された.本手法は,手術器械の機械的剛性とセンシング性能を理論的に両立させるものであり,従来の経験則に頼らない合理的な製品設計を可能にする.今後は、本最適化モデルを基に,より高度な術中診断支援を実現する画期的なセラノスティクス器械の製品化を推進する.