講演情報

[118]医療現場に求められる思考型イノベーション─医療機器の真価を引き出すマネジメント─

滝吉 奈緒美 (小児ホームケア代表㈱オリエンタルランド ファーストエイド)
医療機器や技術の進歩は医療の質向上に大きく寄与している.一方で,それらを日々扱う現場では高度な習熟と強い緊張感が求められ,心理的負荷の高い状態を余儀なくされる.こうした環境はストレスによる離職を招くだけでなく,ヒヤリハットや違和感が共有されにくい状況を生み出し,結果として臨床現場の潜在的なリスクの見過ごしや改善の停滞につながっている.自身の手術看護を含む周術期での経験と,企業組織での人材育成経験から,両者の「人」にスポットを当て,比較・分析をおこなった.
その結果,「失敗の捉え方」「対話の量」「個々の強みや価値観を尊重する関わり方」が,業務運用・改善に大きく影響していることが認められた.手術看護管理として失敗を学習資源とする仕組みや,キャリア教育を重視した育成を導入した結果,スタッフ1人ひとりから具体的な工夫や改善提案が自発的に生まれ,高額な投資を伴うことなく,業務運用における安全性と効率性の向上が実現した.また,スタッフのエンゲージメントが高まり,人材が定着することで,継続的な現場改善が循環する構造が形成された.医療機器の真の価値を引き出すのは,ハード面の進化だけではない.実際にそれを扱う「人」を,単なる人員としてではなく,1人ひとりの「声」に価値があることを実感できる環境を構築することで,機器使用における新たなアイデアや健全な議論が生まれ,更なるイノベーションをもたらすことができる.その積み重ねは,スタッフの働きがいのみならず,医療の質のさらなる向上,人材定着による教育コスト抑制につながり,病院経営を進化させる重要な鍵となる.