講演情報

[35]RFID タグ付き手術器械を用いた手術室でのトレーサビリティ

山下 和彦1, 楠田 佳緒2 (1.東都大学 幕張ヒューマンケア学部 臨床工学科, 2.京都大学医学部附属病院 医療情報企画部)
【はじめに】手術器械の体内遺残や術中破損,劣化した手術器械の使用は手術の質を損ない,SSI の増加など医療過誤のリスクを高める.手術室に持ち込まれる手術器械の使用率が検証されることは少ないため,手術器械の安全な運用評価を困難にしている.我々はRFID タグ付き手術器械と手術室で使用可能なアンテナを開発し,手術室における読み取り精度の検証を目的とした.
【方法】開発した手術室用アンテナは通信距離8cm,RFID タグの角度を変化させても読み込み可能なよう構成した.本報告の対象術式は,ソケイヘルニアと乳房切除とした.実施回数は15 回である.手術ではRFID タグ付き手術器械を使用し,メイヨー台に検出アンテナを設置した.
RFID タグ付き手術器械の1回読み取り検出率(OLDR)と総検出率(TDR)に着目した.すなわちOLDR はアンテナが1回の読み取りで検出する精度,TDR は手術時間中に蓄積されたデータを分析した.
【結果】データ解析により,OLDR は95%の精度が得られた.TDR の読み取り精度は100%であった.OLDR が読み込めなかった要因に,電気メスからのノイズ放射による干渉が挙げられる.メイヨー台に設置したアンテナは,自動的に読み込みをおこなっている.電気メスは電磁ノイズを発生するため,その際にはRFID タグの情報を検出できず,OLDR に影響をおよぼす.
しかし,メイヨー台に置かれた手術器械はすべて読み込みでき(TDR100%),使用率は全使用例で検出された.準備した全手術器械の使用率は約50%であった.
【結論】手術中の手術器械のトレーサビリティは実現可能であり,使用率も明らかにできた.手術室での手術器械のトレーサビリティと使用率を明らかにすることは,体内遺残と手術器械の破損の予防,手術器械の洗浄・滅菌回数の最適化により医療経営的な理解を深められると考えられる.