講演情報
[40]低エネルギーX 線の相互作用理解のための放射線教育コンテンツの紹介
秋吉 優史 (大阪公立大学工学研究科)
医療現場において放射線は診療,治療や機材の滅菌などになくてはならないが,直感的に物理的性質を理解できる教材は限られている.特に,診療に用いるような低エネルギーX 線は高エネルギーのγ線などとは大きく挙動が異なり,ほとんどが光電効果により物質にエネルギーを与えるため,線減弱係数の光子エネルギーの依存性やターゲット元素の原子番号依存性が著しく大きい.中学校の教育現場で用いられているクルックス管は 20keV 程度のエネルギーの X 線を放出するが法令の制限を受けないため非常に容易に実験体系を構築可能である.GM サーベイメータなどと遮蔽体を組み合わせることで線減弱係数が元素により大きく異なり,軟組織と骨を区別できるX 線透過像を何故得ることができるのかを直感的に理解可能とする教育コンテンツを紹介する.また,講演者は長年にわたりペルチェ冷却式の霧箱の開発をおこなっており,α線の飛跡が見えるだけの従来の霧箱とは次元の異なる高性能霧箱の開発に成功している.α線に加えて,β線,そしてγ線やX 線のような光子についても光電効果やコンプトン効果に伴い発生する光電子/ コンプトン電子を観察可能である.飛跡の濃淡からLET の違いを知ることができ,α粒子と電子の質量の差や,原子核の大きさまでも理解可能である.また,X 線は電子を加速してターゲットに衝突させ制動放射の光子として放出され,長い距離を飛ぶが物質にエネルギーを与える際には光電子として再び電子の形に戻り,空気中では数mm 程度しか飛ぶことができない様子を直感的に観察が可能である.もちろんドライアイスの準備も不要でいかなる天候でも数分以内に観察が可能である.広く教育の役に立てて貰うことを目的として製造法は日本放射線安全管理学会誌において公開しており,製品の形でこれまで400 台程度を全国の大学や放射線関係施設,中学高校,そして医療機関に提供している.
