講演情報

[62]階層分析法(AHP)を用いた医療機器更新時の機器選定プロセスの検討

松倉 友哉, 原田 俊介, 金田 達也, 二村 康太, 朝倉 正晃 (豊川市民病院)
【背景】医療機器の選定は臨床工学技士(以下CE)にとって重要な業務である.しかし,担当者の経験や印象に依存した判断が選定においておこなわれることもあり,複数機種を客観的に比較することの難しさが課題となる.特に人工呼吸器のように評価項目が多岐にわたる機器では,選定基準が属人化しやすく,選定プロセスの透明性や再現性の確保が求められる.
【目的】救急外来および画像センターで使用する人工呼吸器について,選定基準を整理し,比較評価の枠組みを構築することで,合理性と説明可能性の高い選定判断をおこなうことを目的とした.
【方法】評価基準として階層分析法(以下AHP)を用いた.評価基準は「操作性」「視認性」「機能性」「デザイン性」「コスト」の5項目とし,代替案として5社の人工呼吸器を選定した.一対比較は,人工呼吸器の運用に携わる20 ~ 40 代のCE 5名が実施し,各CE の比較結果から評価項目のウェイトおよび各機種の総合評価値を算出し,それらを平均化することで各機種の優先順位を導出した.
【結果】評価項目のウェイトは,20 代CE では操作性および視認性,30 代CE ではコスト,40 代CEでは機能性を重視する傾向が認められた.総合評価は上位から0.335,0.255,0.208,0.102,0.100となり,機種間に明確な差が示された.AHPを用いることで5名が個別に評価した結果を合理的に統合でき,選定プロセスの透明性が向上した.
【考察】AHP は,個人間に存在する価値観の差を数値化し,議論を可視化することで合意形成の精度を高める効果がある.経験や心象に依存しがちな医療機器選定において,評価構造を明確化できる点は説明責任の観点からも有用である.
【今後の展望】本手法は,人工呼吸器に限らず,他の医療機器にも応用可能である.今後は評価手順の検討と他職種を交えた意思決定支援の仕組みへ発展させ,より妥当性と再現性の高い選定プロセスの構築が期待される.