講演情報
[EL1-1]医療デバイス応用に向けたDLC研究
平栗 健二 (東京電機大学)
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は炭素を主成分とし,高硬度・低摩擦・耐食性に優れ,生体適合性が高いことから医療用材料として注目されている.本研究は,骨折治療における新しい生体適合性材料として,亜鉛(Zn)を添加したDLCコーティング材(Zn-DLC)の有効性をマウスモデルで検証したものである.一方,Znは骨や皮膚の代謝促進に関与し,骨形成を促す生体必須微量元素である.加齢や栄養不良によるZn欠乏は骨粗鬆症や骨折リスクを高めることが知られている.
我々はこれまでに,ZnをドープしたDLCが骨芽細胞の石灰化を促進することをin vitro実験で確認しており,本研究では,in vivoでの骨形成促進効果を明らかにすることを目的とした.
Zn-DLCは,Zn含有率30 wt.%のグラファイト・Zn混合ターゲットを用いて高出力パルススパッタリング法によりチタン基板上に作製した.比較対照としてZnを含まない通常のDLCも作製した.
成膜後,ラマン分光分析により典型的なDLC構造(DバンドとGバンド)を確認し,ID/IG比は1.2を示した.Znの溶出試験では,Zn-DLC試料を培養液中に浸漬すると,5時間で溶出量がピークに達し,その後徐々に減少したが,48時間経過後も0.3 ppm以上の溶出Zn濃度を維持した.これはin vitroで骨形成を誘導するのに十分な濃度であり,Zn-DLCが生体内でもZnを供給し得ることを示唆している.
in vivo実験では,Zn欠乏食投与のBALB/cCrSlcマウスの大腿骨骨折を人工的に発生させ,DLCまたはZn-DLCで被覆したチタン製副木で固定した.4週間後にCTスキャン像より,各マウスの骨体積,曲げ強度,ねじり強度などの力学的パラメータを計測した.その結果,Zn-DLC群では皮質骨がやや薄く,海綿骨密度が増加する傾向が見られ,骨代謝が活発化していることが示唆された.
海綿骨は骨髄との接触面積が大きく,代謝速度が高いため,この傾向はZn供給による骨形成促進作用を反映していると考えられる.
X線光電子分光(XPS)分析により,生体内試験後のZn-DLC表面からZnが2.95 at.%減少しており,Znが生体内で溶出することが確認された.ラマン分析では,生体内留置によるZn溶出後もDLC構造は保持されており,Zn-DLCが生体内環境下でも安定な構造を維持できることが示唆された.また,深さ方向プロファイル分析から得られたZn溶出量は,マウス体内>細胞共培養液中>培養液中の順に多く,in vivo環境で最も多くZnが溶出されることが分かった.これは,Zn-DLCが生体条件下で効率的にZnを供給できることを裏付けている.
本研究では,Zn含有DLCがZnを溶出することで骨折治療用インプラントとして有望であることをin vivoで実証した.Zn-DLC副木は骨癒合を早め,骨量および機械的強度を高める傾向を示した.
これらの効果はZnの持続的供給による骨芽細胞活性化および骨代謝促進に起因すると考えられる.
結論として,Zn-DLCは生体内でZnを供給可能で高い生体適合性を示し,骨折治療において従来の金属インプラントの治癒促進効果を高める可能性があることが明らかになった.Zn含有DLCコーティングが骨再生医療への応用に向けて有望であることを示す予備的な成果である.
我々はこれまでに,ZnをドープしたDLCが骨芽細胞の石灰化を促進することをin vitro実験で確認しており,本研究では,in vivoでの骨形成促進効果を明らかにすることを目的とした.
Zn-DLCは,Zn含有率30 wt.%のグラファイト・Zn混合ターゲットを用いて高出力パルススパッタリング法によりチタン基板上に作製した.比較対照としてZnを含まない通常のDLCも作製した.
成膜後,ラマン分光分析により典型的なDLC構造(DバンドとGバンド)を確認し,ID/IG比は1.2を示した.Znの溶出試験では,Zn-DLC試料を培養液中に浸漬すると,5時間で溶出量がピークに達し,その後徐々に減少したが,48時間経過後も0.3 ppm以上の溶出Zn濃度を維持した.これはin vitroで骨形成を誘導するのに十分な濃度であり,Zn-DLCが生体内でもZnを供給し得ることを示唆している.
in vivo実験では,Zn欠乏食投与のBALB/cCrSlcマウスの大腿骨骨折を人工的に発生させ,DLCまたはZn-DLCで被覆したチタン製副木で固定した.4週間後にCTスキャン像より,各マウスの骨体積,曲げ強度,ねじり強度などの力学的パラメータを計測した.その結果,Zn-DLC群では皮質骨がやや薄く,海綿骨密度が増加する傾向が見られ,骨代謝が活発化していることが示唆された.
海綿骨は骨髄との接触面積が大きく,代謝速度が高いため,この傾向はZn供給による骨形成促進作用を反映していると考えられる.
X線光電子分光(XPS)分析により,生体内試験後のZn-DLC表面からZnが2.95 at.%減少しており,Znが生体内で溶出することが確認された.ラマン分析では,生体内留置によるZn溶出後もDLC構造は保持されており,Zn-DLCが生体内環境下でも安定な構造を維持できることが示唆された.また,深さ方向プロファイル分析から得られたZn溶出量は,マウス体内>細胞共培養液中>培養液中の順に多く,in vivo環境で最も多くZnが溶出されることが分かった.これは,Zn-DLCが生体条件下で効率的にZnを供給できることを裏付けている.
本研究では,Zn含有DLCがZnを溶出することで骨折治療用インプラントとして有望であることをin vivoで実証した.Zn-DLC副木は骨癒合を早め,骨量および機械的強度を高める傾向を示した.
これらの効果はZnの持続的供給による骨芽細胞活性化および骨代謝促進に起因すると考えられる.
結論として,Zn-DLCは生体内でZnを供給可能で高い生体適合性を示し,骨折治療において従来の金属インプラントの治癒促進効果を高める可能性があることが明らかになった.Zn含有DLCコーティングが骨再生医療への応用に向けて有望であることを示す予備的な成果である.
