講演情報

[EL5-2]知らぬが仏、言わぬが花か?手術支援ロボットの進化に期待!

江島 豊 (東北大学病院 手術部、材料部)
手術支援ロボットの導入は,術者に多大な恩恵をもたらした.従来の立ち仕事や不自然な姿勢(頸部屈曲など)からの解放は,外科医の60%が罹患しているとされる頸髄症や腰痛といった職業病の予防に寄与し,外科医のキャリア継続を支える重要な要素となっている.
技術面においても,ロボットアームと専用鉗子の組み合わせは,従来の手術器具を凌駕する可動域と回転の自由度を実現し,手ブレ防止機能も備えている.さらに,最大15倍の拡大が可能な高解像度3次元視野により,加齢に伴う視力低下や生理的な手の震えに左右されない精緻な手術を可能にした .
患者側のメリットも顕著である.低侵襲な小切開手術は術後疼痛の軽減と入院期間の短縮をもたらすだけでなく,良好な視野と可動域の広さは根治性の向上と合併症の低減に直結している.例えば前立腺全摘術においては,従来の内視鏡手術と比較して出血量の減少や,神経温存による尿失禁・性機能障害の抑制といった優れた臨床成績が報告されている.
一方,その管理運営には多くの課題が残されている.
経済的課題:高額な装置本体に加え,多額の保守費用や高価な専用鉗子が必要となり,従来の内視鏡手術と比較して手術収支が悪化する傾向にある.
運用の過密化:2012年の泌尿器科を皮切りに,2024年には7診療科30術式以上へと保険適用が拡大された.これに伴い,各科間でのロボット使用枠の調整(争奪)が現場の課題となっている .
洗浄・滅菌の困難性:鉗子構造が複雑であるため内腔の洗浄が極めて困難であり,機種ごとに洗浄方法が限定・指定されている点は,CSSDでの運用負荷を高めている.
安全性とインシデント:内視鏡手術全般に共通する課題ではあるが,鉗子の不具合や限定的な視野に起因するインシデントのリスクも依然として指摘されている.
本講演では,これらの諸課題を整理し,持続可能なロボット支援手術体制の展望について共に考えたい.