講演情報

[GL4-1]規格の迷路を抜けて―医療機器の再生処理における障壁の克服―

ロス クラウス (SMP Laboratories GmbH)
近年,多くの国において医療機器の再生処理の質が注目を集めている.規制当局や医療機関が基準の向上に取り組む一方,インターネットやSNSの普及により情報の非対称性が解消され能動的に患者が情報にアクセスし,さらに意識も高まってきている.
過去25年間にわたり,再生処理に関連する様々なISO並びに各国独自のガイドラインが策定されてきた.これらの規格やガイドラインの一部は医療機器製造業者向けに作成されたものであるが,使用者(医療機関)にも適用される内容を含んでいる.再使用可能な医療機器製造業者が使用者に提供すべき情報の指針としては,ISO 17664の各パートが広く参照されており,再生処理工程の各ステップが網羅されている.ただし,洗浄・消毒・滅菌に関する具体的な試験方法は同規格には規定されておらず,洗浄および消毒工程の試験方法についてはISO 15883の各パート,特にパート5に,洗浄プロセスの試験方法と合否判定基準が詳細に定められている.
蒸気滅菌および滅菌器に関する要件はISO 17665に規定されているが,医療機関においても適用する滅菌プロセスを定期的にバリデートする必要がある.通常,滅菌済み物品はパラメトリックコントロールにより使用承認されるが,内視鏡下外科手術器械(MIS機器)のような長い管腔を有する機器では,このアプローチの対応が難しい場合がある.これらの機器に対しては,微生物学的試験法の適用が推奨される.なお,適切に設計された蒸気滅菌プロセスは最も堅牢な滅菌方法の一つであり,適用可能な限り優先的に採用すべきである.
一方,近年は耐熱性を持たない,複雑な医療機器の滅菌ニーズが増加しており,低温滅菌装置の活用が進んでいる.医療現場で用いられる低温滅菌法は主に3種類あり,過酸化水素ガス(VH₂O₂)滅菌が最も広く普及しており,次いで低温蒸気ホルムアルデヒド(LTSF)滅菌,酸化エチレンガス(EOG)滅菌が使用されている.
医療機器の再生処理は非常に複雑であるが,本発表では各種滅菌プロセスを中心に取り上げ,国際的な規格および各国のガイドラインの比較や,医療現場における実践的な視点から解説をおこなう.