講演情報
[KL-1]AEDを通じて考える、医療機器の真の実用化
本間 洋輔 (千葉市立海浜病院 救急科)
本邦において心原性心停止は年間9万件以上発生しており,神経学的予後の改善には現場でのAEDによる除細動(Public Access Defibrillation; PAD)が重要である.2004年に一般市民によるAED使用が認可されて以降,この20年で累計8,000人がPADにより救命されたことは大きな成果である.AEDは最も身近な医療機器のひとつであるが,真の「実用化」を目指すためには,AEDが「存在する」だけでなく,さらに「知られ」「使われる」ことが必要である.本発表ではAEDの実例を通じて,医療機器が真に実用化されるための要件と戦略を考察する.
AED設置場所の妥当性検証はこれまで不十分であった.従来のPAD報告は現場聞き取りが中心であり,Recall biasや時間情報の不正確さが課題であった.一方,AEDの内部機能として電源オン/オフ・パッド装着・電気ショック実施などのタイミングを内部に記録しており,これを体系的に収集・分析することで,より客観的な使用実態の把握が可能となる.現在国内では3社でAEDの内部データが活用できる体制が整っている.一例として,鉄道駅に設置された1066台のAEDについて内部データを用いた調査を実施した.対象期間内に使用されたのは305台であり,使用回数はAEDによってばらつきがあり,設置場所や駅の構造,利用者数などによって使用頻度に大きな差があることが示された.AEDの内部データを使用することで,設置場所の最適化,使用後のフィードバック提供,教育への応用など,多角的な活用が可能となる.機器の使用状況を記録・活用できる設計であることが,社会全体のPAD実施率向上に貢献しうるという点は,機器設計の観点から重要な意味を持つ.
AEDが「使われる」ためには,市民が緊急時に迷わず機器にたどり着けるシステム整備が必要である.日本AED財団では市民参加型のAEDマッピングアプリ「AED N@VI」を運用しており,設置場所・使用可能時間帯の共有を図っている.さらにAEDマッピングデータを活用した救命ボランティア通知システム「AED GO」も展開しており,海外の先行事例同様,救急隊到着前のバイスタンダー活動を促進する仕組みとして機能している.AED自体をIoTデバイスとして設計することで,マッピングシステムや通報ネットワークとの連携は技術的に射程内にある.情報管理や業界横断的な標準化といった課題を解決することが,社会インフラとしてのAEDの実効性をさらに高める鍵となる.
市民目線でのAEDの配置・トレーニングなどはこれまで別個に語られることが多かったが,BCPの観点からそれらをまとめて導入することが重要である.日本AED財団ではAEDを「置いてある」から「使える」にするための緊急時対応計画(Emergency Action Plan; EAP)を公開し,戦略的配備と場所の把握,定期的な訓練と体制整備,緊急時対応フローと連絡体制,振り返り・改善・メンタルケアなどをパッケージとして提唱している.機器の導入がEAPとセットで展開されることで,組織・施設レベルでの実装の実現が期待される.
技術的な要件が整っても,市民に「使う」意思と自信がなければAEDは機能しない.既存の教育に加え,スポーツ選手・著名人・ゲームなどのインフルエンサーと連携したイベントや啓発活動は,市民がAEDに関心を持つ入り口となり,モチベーションを生み,心理的障壁を下げる効果を持つ.演者が施作したイベントをきっかけとした救命事案も報告されており,マーケティングは単なる広報ではなく救命率に関わる戦略要素である.製品の性能開発にとどまらず,こうした普及・啓発戦略を視野に含めた上で社会実装まで見据えた製品戦略を持つことが,真の実用化を担う姿勢といえる.
医療機器の実用化は,機器の性能が完成した時点では終わらない.「知られ・使われる」状態を達成して初めて完成する.AEDの事例が示すように,機器の特性を利用した臨床的に意味のあるデータを提供し,社会インフラシステムと連携し,EAPの枠組みに組み込まれ,市民が使いたくなるマーケティングと結びつくことで,真の実用化が実現する.機器を設計・製造する側が,こうした社会実装の全体像を開発に組み込むことを,医療現場の立場から期待したい.
AED設置場所の妥当性検証はこれまで不十分であった.従来のPAD報告は現場聞き取りが中心であり,Recall biasや時間情報の不正確さが課題であった.一方,AEDの内部機能として電源オン/オフ・パッド装着・電気ショック実施などのタイミングを内部に記録しており,これを体系的に収集・分析することで,より客観的な使用実態の把握が可能となる.現在国内では3社でAEDの内部データが活用できる体制が整っている.一例として,鉄道駅に設置された1066台のAEDについて内部データを用いた調査を実施した.対象期間内に使用されたのは305台であり,使用回数はAEDによってばらつきがあり,設置場所や駅の構造,利用者数などによって使用頻度に大きな差があることが示された.AEDの内部データを使用することで,設置場所の最適化,使用後のフィードバック提供,教育への応用など,多角的な活用が可能となる.機器の使用状況を記録・活用できる設計であることが,社会全体のPAD実施率向上に貢献しうるという点は,機器設計の観点から重要な意味を持つ.
AEDが「使われる」ためには,市民が緊急時に迷わず機器にたどり着けるシステム整備が必要である.日本AED財団では市民参加型のAEDマッピングアプリ「AED N@VI」を運用しており,設置場所・使用可能時間帯の共有を図っている.さらにAEDマッピングデータを活用した救命ボランティア通知システム「AED GO」も展開しており,海外の先行事例同様,救急隊到着前のバイスタンダー活動を促進する仕組みとして機能している.AED自体をIoTデバイスとして設計することで,マッピングシステムや通報ネットワークとの連携は技術的に射程内にある.情報管理や業界横断的な標準化といった課題を解決することが,社会インフラとしてのAEDの実効性をさらに高める鍵となる.
市民目線でのAEDの配置・トレーニングなどはこれまで別個に語られることが多かったが,BCPの観点からそれらをまとめて導入することが重要である.日本AED財団ではAEDを「置いてある」から「使える」にするための緊急時対応計画(Emergency Action Plan; EAP)を公開し,戦略的配備と場所の把握,定期的な訓練と体制整備,緊急時対応フローと連絡体制,振り返り・改善・メンタルケアなどをパッケージとして提唱している.機器の導入がEAPとセットで展開されることで,組織・施設レベルでの実装の実現が期待される.
技術的な要件が整っても,市民に「使う」意思と自信がなければAEDは機能しない.既存の教育に加え,スポーツ選手・著名人・ゲームなどのインフルエンサーと連携したイベントや啓発活動は,市民がAEDに関心を持つ入り口となり,モチベーションを生み,心理的障壁を下げる効果を持つ.演者が施作したイベントをきっかけとした救命事案も報告されており,マーケティングは単なる広報ではなく救命率に関わる戦略要素である.製品の性能開発にとどまらず,こうした普及・啓発戦略を視野に含めた上で社会実装まで見据えた製品戦略を持つことが,真の実用化を担う姿勢といえる.
医療機器の実用化は,機器の性能が完成した時点では終わらない.「知られ・使われる」状態を達成して初めて完成する.AEDの事例が示すように,機器の特性を利用した臨床的に意味のあるデータを提供し,社会インフラシステムと連携し,EAPの枠組みに組み込まれ,市民が使いたくなるマーケティングと結びつくことで,真の実用化が実現する.機器を設計・製造する側が,こうした社会実装の全体像を開発に組み込むことを,医療現場の立場から期待したい.
