講演情報

[SL2-1]ロボット支援医療の現在と未来〜米国での20年の研究経験から〜

上田 淳1,2 (1.ジョージア工科大学機械工学科, 2.神戸大学医学部医療創成工学領域専攻)
本講演では,米国での20年以上にわたる研究生活で培われた,バイオ・ロボティクスと人間モデリングを融合させたロボット支援医療の最新知見を紹介する.単なる自動化の追求にとどまらない「生理学的デジタルツイン」という次世代ヘルスケアの構想である.これは,ロボット技術を用いて個々の患者の生体反応をリアルタイムで計測・予測し,精密な診断やパーソナライズされた治療に繋げる革新的なアプローチとなりうる.
具体的な研究成果として,磁気共鳴画像(MRI)ガイド下での高精度な脊髄細胞注入ロボットや,深層学習を用いた肝臓磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)の自動品質管理など,人間の手技を補完し医療の質を飛躍的に向上させる実例を提示する.ここではロボットが単なる「道具」ではなく,人間と適応的に協調し,その身体機能を拡張する存在であることが重要である.
さらに,米国での多様な研究教育の経験から得られた医療イノベーションの現状についても触れる.特に,日本が今後歩むべきロボット支援医療の技術開発と,グローバルな市場開拓の指針について,実体験に基づいた展望を述べる.医療従事者,エンジニア,そして次世代の研究者にとって,今後の医療機器開発のあり方について深く議論し,技術が社会に与えるインパクトを共有する機会としたい.
日米の産学連携の差異については,米国の研究大学での強力な学内支援体制や,スタートアップへのシームレスな技術移転,そして市場投入を見据えた戦略的な開発プロセスを紹介する.一方で,日本が誇るチームワークおよび精密な要素技術をもって世界の医療市場に適合するシステムとして昇華させるには何が必要かを論じる.自身の共同研究の経験を基に,知財の国際展開や持続可能な開発エコシステムの構築,さらには国際連携のあり方について,その具体的な道筋を聴講者と共に考察していきたい.