講演情報
[CS-01]精神疾患と身体性
*加賀野井 聖二1 (1. 芸西病院)
精神疾患は、認知、思考、感情、意欲、自我など心の機能の障害が症状として現れ、社会生活上さまざまな支障をきたす疾患であり、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病と並ぶ5大疾患の1つに挙げられている現代病である。統計上の精神疾患の患者数は確実に増加しており中でも代表的な疾患として統合失調症が挙げられ思考や感情のまとまりがしずらくなる精神疾患であり、幻覚や妄想、意欲の低下、感情表現の減少などの症状が現れる疾患である。このようにさまざまな症状の中でも特徴的なのが主観的“体験”として理解することが難しい「自我障害」が挙げられる。人は考えるとき、感じるとき、行動するとき、「私がしている」「私のもの」という能動性の意識や感覚を伴っている。しかし統合失調症では能動性が減弱し、自己意識が低下することで自己と他者との境界が曖昧になり“自身が行為をしている感覚”が減弱するため他者に思考や行動を支配されるような感覚を伴うといわれ中でも「作為体験(させられ体験)」が有名である。
近年、神経科学の領域においては自己意識についての研究が行われており、哲学者のGallagher(2000)は自己意識をnarrative selfとminimal selfの2つに区分している。1つは私の所有性という観点からの感覚として「所有感sense of ownership」とよび、他方私が意図して引き起こした行為の感覚として「主体感sense of agency」と呼んだ。さらにFrithら、Blakemoreらは我々には“自己の行為をモニタリングする機能”が備わっており、統合失調症患者はそこに問題があるため幻聴や前述の作為体験が出現すると考えコンパレータモデルにおいて行為主判別のメカニズム、特に予測系の障害によるものと述べている。運動の予測制御では、運動が正しく意図通りに遂行できたかどうかを確かめるために、運動の結果生じる感覚フィードバックを予測し、実際にフィードバックされてくる感覚情報と照合し合致すれば主体感が生じ、誤差が生じた場合は他者行為として帰属される。
今回の講演では当院入院統合失調症患者の自己感の特徴ならびに現在実践しているアプローチについても報告する。さらに自己感の低下が報告されている自閉スペクトラム症児の自己感の特徴や自己感と感覚機能との関連についても併せて紹介する。
近年、神経科学の領域においては自己意識についての研究が行われており、哲学者のGallagher(2000)は自己意識をnarrative selfとminimal selfの2つに区分している。1つは私の所有性という観点からの感覚として「所有感sense of ownership」とよび、他方私が意図して引き起こした行為の感覚として「主体感sense of agency」と呼んだ。さらにFrithら、Blakemoreらは我々には“自己の行為をモニタリングする機能”が備わっており、統合失調症患者はそこに問題があるため幻聴や前述の作為体験が出現すると考えコンパレータモデルにおいて行為主判別のメカニズム、特に予測系の障害によるものと述べている。運動の予測制御では、運動が正しく意図通りに遂行できたかどうかを確かめるために、運動の結果生じる感覚フィードバックを予測し、実際にフィードバックされてくる感覚情報と照合し合致すれば主体感が生じ、誤差が生じた場合は他者行為として帰属される。
今回の講演では当院入院統合失調症患者の自己感の特徴ならびに現在実践しているアプローチについても報告する。さらに自己感の低下が報告されている自閉スペクトラム症児の自己感の特徴や自己感と感覚機能との関連についても併せて紹介する。